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メール

 2007年7月20日金曜日の早朝付けで、以下のようなメールをもらった。

 こんにちは。私は●●(北米のある地)に住んでいます。特にヒッピーとヤッピー(バークレー系の人たち。ヒッピーの真似をして自然志向だけれども実はお金持ちのお坊ちゃまお嬢様たち)がたくさんいて菜食主義を気取っています。myhomepageを見たのですが「子供にとさつ現場を見せて子供に肉を食べるかどうか判断させる…」といったような文面があったのですがそりゃー脅しと大して変わらないんでないのかなあ?と思いました。ちなみに私の友達はもとヒッピーで菜食主義者が2人いますが子供に菜食主義を強制したことを後悔しています。菜食主義って(子供は動物が殺されるのを見てかわいそうとかそういう風に始まりますが)大人の菜食主義ってもっと「心の問題」から始まっているように感じるのですがどうでしょうか?詳しく説明したのですがここでは文字数が足りないでしょうからぜひメールにお返事をください。あ、ちなみに私もクリスチャンです。(ちょっとなんちゃってクリスチャンがはいってます。笑)


 これに対して私は、送信者のちょっと横柄な口調に違和感を覚えながらも、詳しく説明したいというので、12時間以内に以下のような返信を送った。


○○ 様

 初めまして。「動物のお医者さんが見てきたこと」のサイト管理人fussyvetです。私の稚拙なホームページを読んでくださってありがとうございました。
 さて、子供にと殺現場を見せて肉を食べるかどうかを判断させる云々の話ですが、今一度ホームページの文章を読んでいただけたらと思いますが、私は子供に菜食を強制させることを推奨したのではありません。最近、日本では食育という言葉がよく聞かれるようになりましたが、食事というものを通して心を養おうという意味があります。野菜でも魚でも肉でもそうですが、ただ食卓に並べられたものを機械的に食べていると、それがどうやって自分の口に入ってくるかわからなくなります。野菜などは、小学校でも栽培実習がありますし、魚介類は漁をする映像がニュースでも見られますが、肉だけはのんびりとした畜産風景などは見られても”と殺”風景を見る機会はありません。ホームページにも書きましたが、動物は好きでも、ただ並べられた肉の塊に関しては何の情もなく食べる、そのことがとても矛盾したもののように思えてなりません。ですから、機会があれば、肉に付いてもどういう工程で肉ができるのか、知ることは有意義ではないかと思っています。もちろん、親にも見せる見せないの選択肢がありますから、それはその人次第です。
 菜食は宗教なども絡んできたり、「心の問題」でありますし、環境問題でもありますし、エネルギー消費の問題でもありますし、ライフスタイルの選択の問題でもあります。食べるだけで精一杯のとき、そんなことは考えていられません。が、先進国に住み、漠然と消費生活を送ると思わぬ犠牲が陰にあることを忘れがちです。フェアトレードという考え方もそうですが、恵まれた環境にいるのであれば、その陰にある問題も考えて消費生活を送ることは有効ではないかと考えます。同時に、それらの実践は強制されるものではなく、”気付き”によるべきだろうと思います。そんなことを考えつつ、自分の経験をもとにホームページを作りました。子供を脅せという意図はありません。

             fussyvet


 今の私は余裕がない。私に限らず、初対面の赤の他人は皆忙しいものだろう。忙しいけれど、返信を必要とする人にはせっせと返信を書く。「遅れていても、相手に何か不幸があったのかも知れないし…。」と思いなおそうとするが、時間が経つにつれ、忙しい中、メールを打つのに費やした時間がもったいなく、自分が滑稽に思える。この時間をクリック募金に使えばよかった。募金先のメモを持って、郵便局へ行けばよかった。更に悪いことに、私はこのメールの主のように初対面の人間に対する口の聞き方も知らず、返信まで要求してきたにも関わらず、その後こちらに対しては一切の連絡もない若者(若くなければ、ただの○○だ)に対する寛容さを持ち合わせる余分なエネルギーが全くない。

 これまでも、「獣医になりたいが…。」と進路に悩む若者などからしばしばメールをもらい、それに対して私なりに一所懸命に答えてきたけれど、時には「なんじゃこりゃ?」と思わずにいられない場合があり、その度にどっと疲れてきました。私一人の生活であれば、そんな疲労感は屁でもないのですが、今は手のかかる盛りのわんぱく坊主を抱え、高齢出産ママの体力は限界に達しています。ちょっと「冗談じゃない!」状況ですので、メールへの返信を個人にすることは一時中止とします。「返信しなくては。」と思った場合は、個人への返信ではなくブログでさせていただきますので、よろしくお願いします。
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by fussyvet | 2007-07-24 12:57 | 動物

BSE

ひき肉偽装、動機は「BSE」?=民主議員調査にミート社社長

6月27日22時0分配信 時事通信

 北海道苫小牧市の食肉加工卸会社「ミートホープ」のひき肉偽装事件で、牛ひき肉に別の肉を混入させ始めた動機について、田中稔社長が「BSE(牛海綿状脳症)問題で粉状の牛肉が手に入らなくなったため」と話していることが27日、民主党の調査で分かった。 

最終更新:6月27日22時0分


 この社長さんは私にとって忌まわしい記憶を思い出させてくれるために存在するようなものだ。前記事に書いた”ミンチ”と呼ばれる経産のホルスタイン牛は、2001年9月に日本でBSEが見つかってから肉用として出荷されなくなった。なぜか?BSEを診断されるのを恐れたからである。当時、BSEが発見されれば、その地域の畜産業にとっては大打撃だった。畜産農家も屠畜場も、そして農政も恐れた。家畜保健衛生所長自らが、経産のホルスタイン牛を出荷すると農家が予め相談したらそれを引き止めた。こうして、今はさほどでもないが、”ミンチ”牛は屠畜場で見られなくなった。
 私達末端の獣医師は、日本でBSEが発生するなどとは夢にも思っていなかった。BSEが国内で発見されるよりも半年ほど前の2001年初め、農林水産省は全国の家畜保健衛生所に対し、農家で死亡した牛についてBSEの検査をするよう通知を出した(BSEサーベイランス)。我々は、どうして今頃そんな調査をするのか不審に思った。きっかけは、日本がBSEのステータス評価で「カテゴリーⅢ、すなわち、国産牛が(臨床的或いは不顕性に)BSEの病原体に感染している可能性が高いが、確認されていない」という低い評価を下されたこと(経過については参照)だが、農林水産省は既に国内にBSEが入ってきているかも知れないと思っていたはずである。なぜならば、それまでBSEの原因である肉骨粉について、関連団体に対して「指導」という措置しかとってこなかったからだ。通常、人体にも甚大な健康被害を及ぼす可能性がある人畜共通伝染病に関して、「指導」などという甘い規制はしないはずである。それなのに「指導」としかしていなかったのは、関連団体からの大きな圧力があったからに相違ない。そうして、日本国内でBSEは発生してしまった。見つかったのは、2001年9月だが、それ以前から発症していた牛はいたに違いない。精査していなかったから、見つからなかっただけだろう。私たちが屠畜検査した起立不能の病畜牛の中には、BSEを発症していたために起立不能だった牛もいたかも知れない。実際にBSEが発見されてからしばらく、起立不能であったり、歩行障害を呈している牛についてBSEの精査がなされるようになったが、実際に解体前検査にあたったある獣医師は、BSEを見抜けなかったことに責任を感じて自ら命を絶ってしまった。どんなに腕がすぐれた獣医師だって、生前にBSEを診断することなど不可能だった。誰しもその獣医師に落ち度はなかったという行為にすら自らの命をかけるほどの責任を感じる末端の人間がいるにも関わらず、実際に国内がBSE汚染される原因となった圧力団体、そして関係者たちはのうのうとして相も変わらず利権に群がっている。私はどうしようもない憤りにかられた。ちょうど畜産行政のからくりに気付いた頃でもあった。
 しばらく忘れていたが、今回のニュースで思い出した。絶対に奴らを許さないと誓った日。事実を見てきた者はやはり口をつぐむことはできない。
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by fussyvet | 2007-06-28 03:50 | こうして社会は回ってる

ミンチ

 きっこのブログ: マジメな人がバカを見る美しい国を読んでいたら思い出したことがあったので記事にすることにしました。上のリンク先で最初に紹介されているメールにとんでもない肉の話が載っています。そのメールの主は最後に「それから私は肉が食べられなくなりました。特にミンチを使った物は何が入っているのか解らないので全く口にできなくなりました。」と言っていますが、その通りです。
 私は地方公務員の獣医職として働いている時、食肉検査員として何箇所か屠畜場を回りましたが、そのうちの一箇所は健康な牛だけではなく、病畜の屠畜解体も請け負っていました。ここでいう病畜とは起立できない牛です。起立できない理由にも産後起立不能から、神経系の病気によるもの、筋断裂、悪性腫瘍などさまざまありました。病畜の肉と言っても、ちゃんと屠畜検査してから出荷されていましたから、それ自体は何ら違法な行為ではありません。が、これらの病畜牛には、何度も繁殖を繰り返したためガリガリにやせ細ったホルスタインの経産牛がほとんどで、そのような肉はブロック肉にするには質が悪く、ミンチにするしかありませんでした。ホルスタインのやせ細った老牛のことを”ミンチ”と呼ぶほどでした。これも蛋白源を無駄にしないという意味から肯定されていたことですし、何ら悪いことではありません。
 問題は残留抗菌性物質です。起立不能になるような牛には、農家、あるいは大動物臨床獣医師が抗生物質等を投与します。通常は、休薬期間というものがあり、特定の抗生物質等を投与された家畜は特定の期間、牛乳の出荷や肉としての出荷ができなくなります。それを守らず、肉用として出荷してしまう農家がいたわけです。農家にとっては、牛が死んでしまうようりも、死ぬ前に肉として出荷すれば損失もなく、寧ろ利益になりますので、休薬期間を守って出荷するには何の問題もありません。しかし、そこの屠畜場については後日、ある大動物臨床獣医師がぽろっと漏らしました。
「あそこなら1万円も握らせれば、何だってやってくれる。」
実際に金銭のやりとりがあったのかどうかは知りませんが、私が勤務していたそこの屠畜場はなめられていたのです。当時、私は残留抗菌性物質の検査も担当し、検出されれば当該製品を回収しなくてはなりませんでした。食肉業者に対する通知から、関係機関への連絡など、そのための労力は決して楽なものではありませんでした。ですから、私はこの大動物臨床獣医師が言った言葉に心底激怒しました。
「おのれは、こっちがどんだけ苦労していたか知らずに…。アホ言え!」
 実際に非公式に病畜のある内臓と筋肉の残留抗生物質の検査をしていた頃から少なからず、残留抗生物質がコンスタントに検出されていました。そして、それらの肉はミンチ肉として販売されていたのです。

 この残留抗生物質の話はたまたまミンチ肉になりやすい病畜牛にまつわる話で、見た目で残留抗生物質が見える云々の話ではありませんが、ミンチほど誤魔化しやすい製品はありません。それはミートホープの事件からも既にお分かりかと思います。そして、先日、やっと業界に頭が上がらない農林水産省が今回の事件をきっかけにミンチ肉を調査すると言いました。今回の事件が皮肉にも良いきっかけになったのだろうと思います。

 先のリンク先の最後に2002年3月25日付の「農民」に同年1月から3月までの「食品の産地偽装、不正表示一覧」が紹介されていました。それによると17件中12件が食肉関係でした。そう言えば、私が知っている全農系の鶏肉加工業者も当時でいう製造日時を偽っていました。大手スーパーと取り引きがあるところですが、我々検査員よりも大手スーパーの方が怖いらしく、スーパーの査察がある時は熱心に掃除していました。製造日時も大手スーパーの査察時は偽装を偽装していたかも知れませんね。私の病畜牛についての体験は、とんでもないのは農家と獣医師でしたが、ミートーホープの社長が、「消費者や業界の体質も悪い。」と言っていました。「業界が悪い。」という部分には大賛成です。

 私は肉を食べないようにしていますが、もし挽き肉を使う頻度が高く、今回の事件で気になる方は、信用のできるお肉屋さんの店頭でブロック肉を選び、それを目前で挽き肉に加工してもらうのがいいと思います。この方法により、残留抗生物質や産地偽装などは避けられなくても、少なくとも豚肉が混じることはないはずです。

 最後に、私はあの業界は大嫌いですが、あの業界の中でも雇用されている人の中には個人的に信頼できる人はいますし、その人たちまで十把一絡げにしたくはありません。私が信頼している人たちのためにも、あの業界のとんでもない人間たち(偽装だけでなく利権屋も)が白日の下に曝され、一掃されることを願って止みません。
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by fussyvet | 2007-06-27 13:00 | こうして社会は回ってる

卵のポスター

 家畜保健衛生所に勤務していたとき、所内廊下の掲示板にたまごのポスターが貼ってあった。それは卵が完全栄養食品で、もっとも安価で安定した食材だというPRポスターだった。完全栄養食品という言葉には当時も「ビタミンCには乏しいよな。」と心の中で突っ込みを入れていたが、その前を通るたびにどんどん違和感は大きくなり、あるときハタと気が付いた。
「こうやって国民は洗脳され、食生活を固定され、そこに農林水産業界の利権が働いている。」

 もちろん、真摯にやっている人たちが大多数だろう。おばちゃんが一人で地鶏を飼育し、ハーブを与えてその卵を売り、年取った廃用鶏は
「かわいそうだけれど、自分の手でつぶすよ。」
という小規模経営農家。JAの指示により、抗生物質もホルモンも合成抗菌剤もワクチンも一切使わず、
「死ぬ鶏を見殺しにせねばならない。簡単な抗生物質で治るのに。割りに合わない馬鹿な商売をやっとります。」
と悔しそうに語っていた無薬農法の養鶏農家。
 が、対極には助成金や補助金をあてにし、もらえなければ食って掛かってくる農家もあった。何のための農政なのか、私はこの人たちの利権に利用されるために仕事をしているのか、なんのために獣医になったのかと考え続けた。
 戦後、食料困難の中、国民の栄養改善のため畜産が貢献した力は大きい。だけど、現代はそんな基本的で純粋な動機からはるかに遠ざかってしまっている。かつて、私は1日卵1個と牛乳200mlは飲まねばならぬものだと思い込んでいた。私が義務教育で食べていた給食もそうだったから。しかし、あのポスターを見て以来、そんな思い込みから目が覚めた。
 国民の食生活すら、洗脳を受けている事実。政治、経済って新興宗教と似ているところがある。
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by fussyvet | 2007-04-06 20:54 | 動物

犬や猫を食べること

 下記リンク先は残酷な映像が含まれています。見るのを避けたい方はクリックしないで下さい。

韓国から犬猫肉をなくすお手伝いをお願いします。

 犬や猫を食べることについて、それが文化であるとか違うとかいう議論は無意味だと思います。犬や猫を食べない国にはウシや豚や鶏を食べる人間が大勢いて、結局動物種差別の問題に行き着くからです。また、人間が食べなくても、犬や猫をペットとして飼っている限り、その動物の餌にする他の動物が必要となってくる。延々と議論は同じところを回り続けます。本当に「犬や猫を食べないで。」と訴えられる人は、結局自分自身は勿論、そういった肉食の動物を飼わない人になるでしょう。
 が、動物種に関わらず、屠殺方法を問題にすることは大いにあると思います。リンク先の映像を見る限り、私個人は今まで見た屠殺方法の中で最も長時間に渡って最も大きな苦痛を与えるものだと判断します。正視するに堪えられません。どんな動物でもそうですが、食べるのであれば、食べられるものに対して苦痛が最小限になるように。参考までに、日本の多くの屠畜場で用いられている屠殺方法は、ウシは鉄棒を額から脳に向かって瞬間的に打ち込むというもの、豚はこめかみに電流を流して不動化した後に包丁で頚動脈を切るというものです。羊に対しては、鎖で首を吊って窒息させ、ナイフで頚動脈を切るという方法を見ましたが、窒息は苦痛が長く、大きい方法の一つで、全く賛成できません。上記リンク先の映像中の犬は、首を吊られていますが、日本のウシや豚の屠殺時と同等の方法が必要だろうと思います(それでも、電流を流して不動化する方法は議論となっている方法ですが)。
 動物の福祉を考えて下さる方は、是非屠殺方法から問題にしてみて下さい。
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by fussyvet | 2006-09-27 10:15 | 動物

離乳食を考えている時に思ったこと

 昨年(2005年)12月に神奈川県伊勢原市で行われた日本動物実験代替法学会第19会大会の親睦会で、ゲスト演者として来日していたNICEATMのディレクターである獣医師にこれを機会にとばかりに近付き、名刺ももらっていろいろ話をさせてもらっていた時、その獣医師が
「娘がベジタリアンになっちゃって。」
と笑いながら嘆いていた。ローティーンにして娘がベジタリアンになってしまったことは、彼にとって嘆けることだったらしい。娘さんがどうしてベジタリアンになったのかちょこっと聞いてみたけれど、父親である本人もよく分からないらしい。お父さんの姿を見てベジタリアンになったのか、外からのいろいろな情報でベジタリアンになったのか。獣医師という職業は、基本的に動物を利用する立場にある。そういう仕事に就いているお父さんにとって、娘がベジタリアンという生き方を選択したことは、自分の仕事を否定されているようで少し悲しかったのかも知れない。

 なんてなことを昨日で3ヶ月になった息子の離乳食について、いろいろ勉強し、検索している間に思い出した。厳格なベジタリアンの中には自分の子供もベジタリアンにしようとする者もいるかも知れない。だが、私はそれは親のエゴだと思っている。乳幼児期に菜食で育った子供について、その子が本当に健康上問題なく成長できるというデータはない。息子には普通の離乳食を与えようと思っている。卵、お魚、そしてやがてはお肉も。何を食べていきていくか、どうやって生きていくか、どんなライフスタイルにするかはこれからの息子の人生の中で息子が決めればいいと思う。私がとやかく言うことではない。娘がベジタリアンになってしまったNICEATMの獣医父さんの逆で、息子が肉食獣になってしまった獣医母さんに将来私はなるのかも知れないが、それもまた良しである。

 とりあえずの離乳食、良識派の6名の委員が先頃辞任してしまったプリオン調査会も業界団体も信用できないので、牛肉だけは息子に与えないでおこうと思うけどね。
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by fussyvet | 2006-04-05 15:33 | 動物

農家と家畜保健衛生所との関係

(ある養鶏場)の獣医師2人逮捕 茨城の鳥インフル問題 [ 02月27日 13時46分 ] 共同通信

 鳥インフルエンザ問題で、茨城県警は27日、鶏の抗体陽性反応を県に届け出なかったなどとして、家畜伝染病予防法違反(届け出義務違反、検査妨害)の容疑で、養鶏会社○○○(横浜市)の獣医師2人を逮捕した。さらに数人を取り調べており、容疑が固まり次第、同日中に逮捕する方針。
 県警の調べや茨城県によると、○○○の獣医師は昨年8月下旬、運営する茨城県内の3養鶏場の検査で、別の養鶏場の鶏から採った検体を3養鶏場の検体と偽って提出し、県の検査を妨害した疑いがある。県の調査では、同社の別の2養鶏場でも検査妨害があったことが判明している。
 ○○○の獣医師は昨年、知人の独立行政法人「動物衛生研究所(動衛研、同県つくば市)職員の獣医師に非公式に鳥インフルエンザの検査を依頼し、抗体陽性反応が出たが県に届け出なかった疑いも持たれている。


 このニュースでは県が全く感知していなくて、寧ろ「検査妨害」などと容疑者を一方的に悪者にしているけれど、真実はどうかなと疑ってしまう。それから、動物衛生検査所についても何も触れられていないけれど、鳥インフルエンザの検査を実際にしたのはこの動物衛生検査所で、結果を見たのも同じ。一般の人が見たら、「どうして検査した方が届け出ないの?」と疑問に思うのが普通じゃないかと思う。この辺り、とても曖昧。
 だいたい、畜産農家と管轄の家畜保健衛生所との関係は、持ちつ持たれつでとても濃密。更に獣医師同士は、同県の獣医師会で顔見知りになるから・・・。
 家畜保健衛生所は誰のためにあるのか分からないような機関。本来なら畜産の振興と病気の蔓延予防のため、国民全体のためにあることが建前。でも、その実は農家のためオンリーであって、農家もそれを当然だと思っている。以前、私が勤務していた時、ある養鶏場から定期的にある最近の検査のために持ち込まれる検体を検査していた。めったにその最近は検出されないのだけれど、ある時、持ち込まれた検体全てから検出されたため、依頼主であるその養鶏場に結果を伝えた。すると、驚くようなことが起こった。その養鶏場に鶏を卸している別の養鶏場が電話で怒鳴り込んできたのだ。
「そんな結果、どうして出したのだ!?もっと、考えろ!」
というものだった。「この人、何を言ってるのだろう?私にもみ消せとか、内緒にして結果を出すなとか言ってるのか?」と呆れてしまった。周囲に相談してみたが、依頼された検体の結果を出さずにはいられないことは共通の意見で当然のことである。が、その怒鳴り込み養鶏場にしてみれば、守ってくれるはずの家畜保健衛生所(因みにその怒鳴り込み養鶏場は管轄外)が守ってくれなかったというところだったわけだ。
 私はね、仕事を全うしたかったの。あなただけの僕じゃなくて、公僕だったんです(過去形)。そんな当たり前のこと、通じないのが、農林水産分野であり、利権に群がる輩が蔓延ってしまう大きな理由です。もちろん、真摯にこつこつやっている農家、獣医師も大勢要るのですが。昔と違って、今や、もたれあい、もみ消し、隠蔽などすれば、このニュースのように逮捕されてしまうのだということを我々獣医師は肝に銘じておかなければならない。
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by fussyvet | 2006-02-27 16:30 | 動物

鶏の殺処分風景より(2)

「動物愛護運動家は何にも分かっちゃいない。」
 学生時代は大学の先輩から、行政にいた時は同僚からしばしば聞かれた言葉である。

 鳥インフルエンザが日本で発生し、当該動物の殺処分風景を見て、心を痛めた人は大勢居るだろうと思う。一部の動物権利論者である国内の活動家は、鳥インフルエンザが発生した農家の管轄行政機関の連絡先をリンクして、「処分方法を考えて欲しい。」という旨の意見を自ら届けるばかりでなく、その文章を掲載して、コピー・ペーストにより多くの賛同者にもWebを通して行動するように求めていた。その賛同者の中には、
「私は鶏肉を食べますが、意見を送っていいでしょうか?」
と躊躇するようにその活動家に尋ねたのだが、
「もちろん、いいです。」
と言ってはばからなかったのには?マークが10個くらい連なった。
 意見を届けるだけではなく、その活動家は行政からの回答も求めていた。一個人の活動家である。コピー・ペーストされた同じ内容の文章が五万と届く中、一人一人に丁寧に回答している暇は行政の担当者にはない。こんなこと言うと、
「どうして市民の声に答えないのか?不誠実だ!」
と怒る人もいるだろう。しかし、多くの地方自治体の県庁などの担当者は一人だけである。しかも、その担当者は鳥インフルエンザの発生により、もっと優先すべき職務がある。彼らの職務は畜産の育成と保護、家畜伝染病の蔓延予防である。鳥インフルエンザなど人にも感染すると言われている疾病である。そちらの方が大切なのである。
 現場での殺処分風景が残酷だとして、
「もっと丁寧に鶏を扱って。」
という声が届けられたようだが、どの程度にすれば「丁寧」の範疇に入るのだろうか?少なくとも、作業する人間も感染の危険に曝されている。そして、近隣住民・養鶏もだ。迅速さが第一である。そして、作業する労働力は限られている。そんな現場の人間からすれば、「やっていられない。」であろう。
 一個人の活動家として、そんな多忙な人間達に声を届けて回答を要望するだけでは、ただ単に公務執行妨害以外の何物でもない。かわいい鶏のために一番良いのは、鶏肉の消費を止めること、鶏を餌としているイヌ・ネコも飼わぬこと、そして現場での殺処分風景を”丁寧な”ものに変えたいのであれば、自らボランティアを募って、殺処分に参加することを志願することである。
「鳥インフルエンザで鶏が殺処分される前に予防のため鶏用のワクチンを…。」
とも綴ってあったが、参考までにそのワクチンを開発し、製造するには他の多くの動物が犠牲になることになる。矛盾を指摘してあげたいが、相手が敵対視しているようなので何とも打つ手はない。

 先日、エスキモーのドキュメンタリー番組を見た。エスキモーの父親に倣って10代前半の息子は小さい頃から狩りをしてきた。獲物はシロオオカミに草食動物、そして一角クジラ。彼らはそれでしか生活する糧がないのだろう。ベジタリアンという生き方が選択できる環境にある者はとても恵まれていると思った。私はテレビ画面から目をそらすことはできても、エスキモーの彼らに、
「かわいそうだから、殺さないで。」
と言うことはできない。
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by fussyvet | 2005-12-24 16:15 | 動物

ポスター

 アメリカ最大の動物保護団体Humane Society of the United Statesのキャンペーンポスターです。感謝祭に向けてかも知れません。アメリカで食肉生産のために殺される動物の95%以上が鳥類だというのに、アメリカの人道的な屠殺に関する法律が鳥類を担保していないことについて、改善を求める署名活動を行っているようです。
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by fussyvet | 2005-11-22 12:52 | 動物

農林水産によく見られるもたれ合い

 茨城県の養鶏場(○○××社長)が8月、鳥インフルエンザウイルス感染の可能性があるとして県の立ち入り検査を受けた際、鶏の検体採取について虚偽の報告をしたとして、同県警生活環境課と石岡署は12日午前、家畜伝染病予防法違反(検査妨害)の疑いで同養鶏場の事務所などの捜索を始めた。

 県などによると、同養鶏場は8月28日に立ち入り検査を受けたが、○○社長は「県の家畜防疫員が検査をすると、ウイルスが入ってくる可能性がある」と主張。「全16鶏舎から自ら採取した」とする書類を添えて検体を提出したが、実際は16鶏舎中5鶏舎だけの検体を提出していたという。

 結果は陰性だったが、県の再検査で一部検体から抗体が検出された。県が今月上旬、○○社長に事情を聴いたところ、正しい検体を提出していなかったと認めたという。

 農水省は、鳥インフルエンザの検体は都道府県の家畜防疫員が採取するよう求めている。○○社長は獣医師資格を持っているが、家畜防疫員資格はなかった。


 私は家畜保健衛生所の家畜防疫員をしていたこともある。そこで見てきて与えられた強烈な印象は、農家の強さ、農家への各種助成金の多さ、そしてそれらをかばう農林水産関係の獣医師(行政職員、民間を含めて)の”偏り”だった。自らが経営する養鶏場についての検査を獣医師の資格を持った経営者が行う。通常、養鶏場と家畜保健衛生上はツーカーの中だから、「自分にやらせてくれ。」と経営者である獣医師が主張すれば、”信頼関係”を理由に任せてしまう。そんな馴れ合いの構図は確固とした壊しようのないものとなってしまっている。そんな似非”信頼関係”がなければ、家畜保健衛生所の仕事が進まないという現状にも大いに問題がある。これは、農林水産省下における産業全般に渡る問題であるのが実情。公共事業にまつわる問題の次は、ここではないかと思う。
 BSEが日本で発生した年、プリオンが検出される可能性が高い年老いた乳牛、いわゆる廃用牛が屠畜場で屠殺することを拒まれたり、農林水産関係団体が直々に「廃用牛は肉用として屠畜場に持ち込むな。」とお触れを出したりしていた。乳を出せず、コストばかり食う廃用牛は酪農家に溢れかえり、肉にすればまだ金になったものをかかりつけの獣医師に安楽死してもらって廃棄するしかなかった。
 そんな中、家畜保健衛生所長、他所のお偉いさん、共済のお偉いさん、いずれも獣医師だが、こう言った。
「○○の屠畜場に持って行って一万円握らせれば、やってくれるわ。」
 その屠畜場は私が以前食肉衛生検査員をしていたこともあったところであり、BSE騒動でかつての同僚も、現場の人たちもどれほど心労がかさみ、見えない出口を求めていたことだろうか、容易に想像がついた。その3人の獣医師の言葉を聞いた途端、腸が突沸した。
「何を言ってるんですか!屠畜場だってどんなに大変な思いをしているか!それも考えて下さいよ!」
こんなタヌキ親父たちが一都道府県の農政を仕切っているのかと思ったら、悔しくて腹が立って仕方がなかった。
 その前の年、口蹄疫が日本で発生した時、第一通報者である獣医師の元には嫌がらせの電話が入り、精神的にまいってしまったという。現場の真摯な人間は追い詰められ、上層部は保身しか考えない。茨城の経営者も経営者として必死だったのだろう。…皆必死。それを一部の者だけがつるんで、もたれ合って、守られ、外部の者はますます追い詰められる図式はもう見るに堪えられない。
 農政に関わる議員、行政マン、獣医師でおかしいと思った人間が声を出すしかない。残念ながら多くの場合、そんな声は大きな力にかき消されてしまうのだけれど。
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by fussyvet | 2005-11-12 13:33 | 動物