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動物実験の代替法が取り入れられている獣医系大学は国内にあるか?

 前回に引き続き、日本獣医学会のQ&Aより。2007年7月25日付けで以下についての回答文が掲載された。

日本獣医学会:獣医学Q&A 実験動物の代替法が行われている獣医系大学はありますか?

 回答しているのはやはり北海道大学獣医学部の教授である。「動物実験代替法が取り入れられているか?」の質問にはっきりと「はい。」と答えられているけれど、これをこのまま鵜呑みにすれば、入学後苦悶する学生は絶えないだろうと危惧する。「動物が苦悶の表情を呈するような教育実習はまずどこの大学でも行なわれていない筈」とあるが、実際に安楽死方法を知らない獣医の大学教官による指導により、苦悶する学生が今でもいるし、ストリキニーネという痙攣を起こす物質を生きたマウスのお腹に注入して、痙攣に苦悶させる実習が行われている。これらはDVDなどで代用できる実習だとして海外などでは毎年動物を苦悶させるような実習は行われていないところもあるが、そのような映像教材による代替法の取り入れについても日本の獣医系大学は消極的であり、まだまだ普及していない。ただ、実際にこの北海道大学では教育における動物実験の代替法を積極的に取り入れようとする動きがあることは事実で、実際に熱心な大学教官ががいらっしゃる。その先生たちの努力を否定するものではない。「代替法が取り入れられています。」とはっきり言い切れるほどではないが、早く肯定の肯定が内部学生から見ても第三者から見ても躊躇なくできるよう、願って止まない。
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by fussyvet | 2007-07-28 22:54 | 動物

獣医系大学での動物実験について

 日本獣医学会のホームページに獣医学についての質問と回答が掲載されている。そこに2007年7月20日付けでタイトルのようなQ&Aがアップされた。

獣医系大学での動物実験について

 これによれば、
「解剖や簡単な外科手術の実習には動物が生きていることは必ずしも必要ではないため、動物を安楽死させた後行っています。しかし、生体反応を見る実習では動物は生きたまま使用されております。しかし、動物は深麻酔されており、苦痛を全く感じない状態で実験されています。実習の内容によっては麻酔下で動物に何らかの処置を行い、回復を待ってデータを取るというような実習もありますが、その際は、動物が確実に回復するよう獣医師が細心の注意を払って看護しております。原則は実験動物であっても附属の動物病院に来院する動物と全く区別はしないということです。」
とのことで、これが事実であれば、獣医系大学では実験動物の福祉が配慮されているのだと思う。この回答は北海道大学獣医学部の教授によるものだが、回答文を読む限り北海道大学だけではなく、全ての獣医系大学に当てはまるのだととれる。因みに私自身が学生実習を行っていた1988年から1992年にかけては、ここに書かれていることは事実ではなかったと断言できる。しかし、今は2007年だ。15年経った今、この日本獣医学会のページにあるように

・解剖や簡単な外科実習には動物を安楽死させた後に行われているか。
・生体反応を見る実習では、動物は深麻酔されており、苦痛を全く感じない状態で実験されているか。
・麻酔下で動物に何らかの処置を行い、回復を待ってデータを取るというような実習の際は、動物が確実に回復するよう獣医師が最新の注意を払って看護しているか。
・原則は実験動物であっても附属の動物病院に来院する動物と全く区別はしていないか。


この四点について事実であるのかどうか知りたいと思い、今現在、獣医系大学に所属している学生さんに尋ねてみた。

 すると一人は「この回答文に書いてあるほど素晴らしいところまでは、まだまだ到達していない。」とした上で、

・自身が通っている大学では解剖実習はこの日本獣医学会の回答にあるように全て安楽死後だが、外科実習は、全て生体を用いる。
・「深麻酔下で手術終了後そのまま安楽死」の予定にはなっているが、その麻酔コントロールも学生が行う為に不安定で、動物に苦痛が全くない状態か疑問である。
・生体反応を見る実習では、自身の大学では苦痛を感じない状態で全て行われているというのは絶対ない。生理反応ならともかく、生体反応を見る実習では、苦痛を伴なうものは沢山ある。
・麻酔下で動物に何らかの処置を行い、回復を待ってデータを取るというような実習の際は、動物が確実に回復するよう獣医師が最新の注意を払って看護しているというのはありうるか疑問。自身の大学では、知らないところで指導教官が夜な夜な看病しているのを気づいてないだけなら別の話だが、回復後データを取る際は、学生と研究室の先輩で看護しているだけのように思う。
・「原則は実験動物であっても附属の動物病院に来院する動物と全く区別はしていない。」とのことについては今まで動物を用いた実習を行う全ての先生と話してきたが、「実験動物」と捉えていない指導教官はおらず、絶対にあり得ない。「実験動物だから仕方がないけど、でもあなたの気持ちは十分わかるよ。考えて行かなければいけないね」が、最高レベル。

 また、一人目と別の大学の通っている別の学生さんは、

・薬理学や毒性学実習では薬物の生体反応や行動を観察するのでマウスには麻酔などはしない。苦痛にのたうち回り死んでいった。
・動物実験以外にも今通っている大学には飼育方法や間引き等問題はたくさんあると思われる。

等々、体験を通した意見を語ってくれた後、「おそらくこの回答をされた教官の立場としては、日本の獣医学部は動物実験委員会で審査をしているから大丈夫と言わざるを得ないのではないか。そうでないところもあると発言したら大問題になるはずだから。」と結んでくれた。

 私個人の感想は、仮にも社会的に認められた法人格を持つ団体の公式サイトに掲載された現実と違う内容を真に受けて獣医系大学を必死に目指し、入学後苦悩する学生が増える要因になるから、由々しきことだと甚だ憤慨したが、上記二人目の学生さんが最後に言ってくれた言葉がもっともなことで、現役の獣医系大学教官としては対外的にそう回答せざるを得ない内容だったと思う。私が獣医師を目指す若者にできるアドバイスとしては、公式の言葉と非公式の言葉の両方で情報収集してから進路を決めてくださいということだけだ。この日本獣医学会に質問を寄せた本人にはこの本文を読んでもらえたらと思うが、獣医学会の公式文章だけを信じるだけでも、また個人の意見を情報源とするだけでも、どちらも危険で不十分なのだ。よく聴き、よく見極めて、最後には最も大切なことだけれども、格好だけでも金目当てだけでもなく、自分にとって一番適した道をその時々で選び、できるならば一過性ではなくその後も少しずつ大学教育における動物の犠牲について考えていって欲しいと思うのだ。
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by fussyvet | 2007-07-26 15:08 | 動物

ミンチ

 きっこのブログ: マジメな人がバカを見る美しい国を読んでいたら思い出したことがあったので記事にすることにしました。上のリンク先で最初に紹介されているメールにとんでもない肉の話が載っています。そのメールの主は最後に「それから私は肉が食べられなくなりました。特にミンチを使った物は何が入っているのか解らないので全く口にできなくなりました。」と言っていますが、その通りです。
 私は地方公務員の獣医職として働いている時、食肉検査員として何箇所か屠畜場を回りましたが、そのうちの一箇所は健康な牛だけではなく、病畜の屠畜解体も請け負っていました。ここでいう病畜とは起立できない牛です。起立できない理由にも産後起立不能から、神経系の病気によるもの、筋断裂、悪性腫瘍などさまざまありました。病畜の肉と言っても、ちゃんと屠畜検査してから出荷されていましたから、それ自体は何ら違法な行為ではありません。が、これらの病畜牛には、何度も繁殖を繰り返したためガリガリにやせ細ったホルスタインの経産牛がほとんどで、そのような肉はブロック肉にするには質が悪く、ミンチにするしかありませんでした。ホルスタインのやせ細った老牛のことを”ミンチ”と呼ぶほどでした。これも蛋白源を無駄にしないという意味から肯定されていたことですし、何ら悪いことではありません。
 問題は残留抗菌性物質です。起立不能になるような牛には、農家、あるいは大動物臨床獣医師が抗生物質等を投与します。通常は、休薬期間というものがあり、特定の抗生物質等を投与された家畜は特定の期間、牛乳の出荷や肉としての出荷ができなくなります。それを守らず、肉用として出荷してしまう農家がいたわけです。農家にとっては、牛が死んでしまうようりも、死ぬ前に肉として出荷すれば損失もなく、寧ろ利益になりますので、休薬期間を守って出荷するには何の問題もありません。しかし、そこの屠畜場については後日、ある大動物臨床獣医師がぽろっと漏らしました。
「あそこなら1万円も握らせれば、何だってやってくれる。」
実際に金銭のやりとりがあったのかどうかは知りませんが、私が勤務していたそこの屠畜場はなめられていたのです。当時、私は残留抗菌性物質の検査も担当し、検出されれば当該製品を回収しなくてはなりませんでした。食肉業者に対する通知から、関係機関への連絡など、そのための労力は決して楽なものではありませんでした。ですから、私はこの大動物臨床獣医師が言った言葉に心底激怒しました。
「おのれは、こっちがどんだけ苦労していたか知らずに…。アホ言え!」
 実際に非公式に病畜のある内臓と筋肉の残留抗生物質の検査をしていた頃から少なからず、残留抗生物質がコンスタントに検出されていました。そして、それらの肉はミンチ肉として販売されていたのです。

 この残留抗生物質の話はたまたまミンチ肉になりやすい病畜牛にまつわる話で、見た目で残留抗生物質が見える云々の話ではありませんが、ミンチほど誤魔化しやすい製品はありません。それはミートホープの事件からも既にお分かりかと思います。そして、先日、やっと業界に頭が上がらない農林水産省が今回の事件をきっかけにミンチ肉を調査すると言いました。今回の事件が皮肉にも良いきっかけになったのだろうと思います。

 先のリンク先の最後に2002年3月25日付の「農民」に同年1月から3月までの「食品の産地偽装、不正表示一覧」が紹介されていました。それによると17件中12件が食肉関係でした。そう言えば、私が知っている全農系の鶏肉加工業者も当時でいう製造日時を偽っていました。大手スーパーと取り引きがあるところですが、我々検査員よりも大手スーパーの方が怖いらしく、スーパーの査察がある時は熱心に掃除していました。製造日時も大手スーパーの査察時は偽装を偽装していたかも知れませんね。私の病畜牛についての体験は、とんでもないのは農家と獣医師でしたが、ミートーホープの社長が、「消費者や業界の体質も悪い。」と言っていました。「業界が悪い。」という部分には大賛成です。

 私は肉を食べないようにしていますが、もし挽き肉を使う頻度が高く、今回の事件で気になる方は、信用のできるお肉屋さんの店頭でブロック肉を選び、それを目前で挽き肉に加工してもらうのがいいと思います。この方法により、残留抗生物質や産地偽装などは避けられなくても、少なくとも豚肉が混じることはないはずです。

 最後に、私はあの業界は大嫌いですが、あの業界の中でも雇用されている人の中には個人的に信頼できる人はいますし、その人たちまで十把一絡げにしたくはありません。私が信頼している人たちのためにも、あの業界のとんでもない人間たち(偽装だけでなく利権屋も)が白日の下に曝され、一掃されることを願って止みません。
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by fussyvet | 2007-06-27 13:00 | こうして社会は回ってる

子供か仕事か

亮子に子離れ指令!吉村強化委員長「柔道に集中しろ」
6月14日8時2分配信 スポーツ報知


 全日本柔道連盟の吉村和郎強化委員長(55)が13日、リオデジャネイロ世界選手権(9月)で出産からの復帰Vを目指す女子48キロ級・谷亮子(31)=トヨタ自動車=に「柔道専念」を勧告したことを明かした。

 吉村委員長は「これからは柔道に集中していかないといけない。(育児との)2足のわらじではきつい」と子離れを勧めた。すでに谷本人とも直接話をし、谷の母・和代さんには大会までの育児のサポートを求め、理解を得られたという。

 谷は世界代表に決定後の全日本合宿に長男・佳亮ちゃん(1つ)を帯同。来月参加するスペイン合宿にも連れて行く可能性が浮上していた。しかし「いくら子どもがかわいくても、代表になったらそうは言ってられない」と吉村氏。佳亮ちゃんのスペイン行きは「ないだろう」とした。

 すべては3か月後に迫る世界選手権で勝つための“非情指令”。「本番までに追い込んでいくしかない。動き自体は良くなっている」と期待を込めた。  最終更新:6月14日8時2分


 ワーキングマザーを取り巻く状況を全て凝縮したような問題記事。私自身は谷選手が出産した4日後に出産し、しかも出産予定日が2月1日だったにも関わらず約1ヶ月早産したことも全く同じなので、彼女の記事を追っていくと自然に自分自身の状況を鏡で見ているように感じる。先日、彼女が産後初の大会に出場した時、私も活動を再開した頃。まだ授乳中であったり、夜も子供に起こされたりすることも彼女と同じ状況で、私は本当にふらふらでましてや柔道なんかできない状況だったから、「谷選手はすげぇや。」と思ったものだ(最も年齢差もかなりあるのだけれど)。
 「子供を預けられるようになったのだから、楽しているはずだ。」と思われているのなら、それは正面切って反論させてもらう。入園準備から、毎日の登園準備、送り迎え、帰宅後の世話と翌日の準備は夫ではなく全て私。他のワーキングマザーを見ていても、どうやら家事育児は母親の方に覆いかぶさっているようだから、子供を持ちつつ働く女性の負担は大きい。それでも子供はかわいいし、仕事はしたい(しなくてはいけない)。どちらも大切である。
 そんな中、谷選手は”仕事”に専念するよう追い込まれた。おっぱいは断乳するのだろうか?子供、「おっぱいちょうだい。」と泣くだろうな。お母さんが育児を手伝ってくれるのか。うちは無理だ。子供を母親一人で育てるのはとても困難だ。ワーキングマザーならなお更だ。誰かサポートしてくれないと働きながら子供を育てられない。。専業主婦だって、2人以上子供を育てるとしたら、全く一人でなんて無理だと諦める人、多いんじゃないかな。このニュースはそうはっきりと言っている
 私は学会に息子を連れて行くけど(可愛いからという理由だけじゃなく、預けられるところがない)、谷選手は置いていくんだ。胸が痛みやしないかな。仕事の合間に子供のことを思い出さない母親はいないだろう。私も預けられるところがあったらな…。いろいろ想う。
 誰かサポーターがいないと、仕事に集中できない…、このニュースはそのこともはっきり言っている。男性はどう?こんな悩み抱えている男性はいる?谷選手の旦那さんが、谷選手が言われたのと同じことを監督から言われたなんて話は聞いたことない。妊娠出産、そして母乳育児の場合は授乳も女しかできないから、育児も最初は女性主体になる。出産後、母乳をあげることは女性しかできないかも知れないけれど、ミルクやおむつ交換、入浴なんかは男もできる。が、妊娠から出産後一定期間、女性が仕事を離れて家庭生活一つになることを理由にして夫ができることでもしなければ、そのまま男性に引き継がれることなく女性への負担は増えていく。我が家は典型的なそのパターンにはまっていた。
 ここ1年くらい、出産後夫婦仲が悪くなりまもなく離婚する夫婦が芸能ニュースでも流れていた。私が置かれた状況のせいで目に付いたのかも知れない。私も育児と家事では重荷にしかならない夫と別れて、自由の身になりたいと思った。自立できるだけの収入が得られる仕事を見つけて、実行しようと思うことがしばしばある。が、幼い子供を抱えた女に良い仕事はない。身動きできずに苦しい。
 そんな中、先日見た映画。

「モナリザ・スマイル」(大好きなジュリア・ロバーツ主演)

 泣いた。そしてすっきりした。個々の登場人物についての好き嫌いを感想にしているレビューも多いが、一定以上の年を重ねた女なら、全ての登場人物に自分を見、わかるのではないかと思う。「子供か(家庭か)仕事か」と女だけ二者択一を迫られるなんて…。「ワーキングウーマン(マザー)」と「専業主婦」、「シングル」と「既婚」と女だけ周囲から区分けされて、十把一からげにされたり、対立させられたりするなんて。私は働く女だったし、シングルだったし、結婚したし、専業主婦も経験したし、誰でも一枠に収まっているわけではないのだ。「女の敵は女」という時代から、「女を理解できるのは女」、さらには「男女が理解し合い、助け合える」時代に望みをかけたい。

 とりあえずは保育園の条件を緩和してちょうだい。女の労働条件は勿論、夫の労働条件も何とかしてちょうだい。
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by fussyvet | 2007-06-14 13:21 | こうして社会は回ってる

獣医系大学の定員を増やすらしいけれど、ことはそう簡単なもんじゃないと…

獣医学部の定員増へ・30年ぶり08年度にも

 政府は全国の大学にある「獣医学部」の定員を約30年ぶりに増やす方向で検討に入った。鳥インフルエンザやBSE(牛海綿状脳症)など家畜の安全性に関心が高まっている現状を踏まえ、獣医師の増加につなげる狙い。与党とも調整し、早ければ2008年度の入学から定員を増やす。

 獣医学部や畜産学部など獣医学を学ぶ課程を持つ大学は現在、国立大学法人が10校、公立大学法人が1校、私立大学が5校。合計定員は 930人だ。文部科学省は「獣医師の数は足りている」との判断や教育水準の維持などを理由に1970年代から大学数、定員数とも増やしていない。 (16:10)
日経2007/3/19 ニュースより

 このインターネット上のニュースには書かれていないけれど、地方自治体の獣医師が足りないからというのが大きな理由らしい。国内でのBSE発生以来、それまではリストラの対象でもあった獣医職は急に増えることになり一気に売り手市場になってしまった。しかし、辞める獣医が多く、自治体の獣医師はいつも足らないのだ。だから、獣医学部の定員を増やすことになったらしいが、感想を言わしてもらうならば、獣医学部の定員を増やすことが自治体の獣医師の増加にはつながらないと思う。自治体の獣医師不足は、「獣医になったのに、こんな仕事…?」辞めてしまう獣医が多いことが大きな理由の一つだと思うからだ。獣医学部の定員を増やし、世に出す獣医師を多くしたところで、私のように獣医師免許を持ちながら、獣医師の仕事をしていない者が増えるだけではないかと思う。実際、私がいた自治体の同期では獣医師は7人だったが、私を入れて既に6人辞めている。残っている一人も連絡を取り合っていないので分からないが、もしかしたら辞めているかも知れない。今でも若い獣医師も辞める率が高いが、いろいろ見ているとどうやら私がいた自治体だけの傾向ではないようだ。
 どうして辞めるのか?6年間夢を抱きつつ一所懸命勉強しても、地方自治体に入った獣医師の業務は、およそ獣医師として学んできたこととは程遠い内容だからだ。保健所でのイヌ・ネコの殺処分、屠畜場で肉屋に怒鳴られながらの食肉検査(仲の良い職場もあるけれど)、農政での畜産農家の顔色を伺いながらの助成金行政(まじめな農家もありますが)。BSEの検査などは、獣医の大学実習で行う手技を使うけれど、これとてテクニック自体は獣医師でなくてもできることだ。地方自治体の獣医職に就いた獣医師は、厳しい大学受験を経て合格し6年間夢に満ち溢れて忙しく学んでも、それまでのことは報われないと感じ、希望を失って辞めていくものが多いのだ。そんな状況で獣医師になる数だけ増やしても、ペーパー獣医師が増えるだけだろうと思う。
 農林水産省は2年に一度、獣医師免許を持ったものの就業状況調査みたいなものをしているから、獣医師免許を持ったものが現在どういう状況にあるのか、実態を把握しているはずだ。そういう分析はされていないのだろうか?もっとも、獣医師免許を持ちながら、獣医師としての道を歩んでいない者は、国が追跡調査をしようとしても、その足取りがつかめないだろうけれど。私も思い出して、4年ぶりに実態調査を出したもの。獣医師会に入っていないから、その時期も分からず、用紙ももらえないからね。私はたまたま近い知り合いの獣医師が書いていたから調査の時期だということを知って、自分で様式をダウンロードして書いて送ったのだから、2年後にまた近くに獣医師がいなければ思い出さないだろうし、だからと言ってずっと放っておくわけにもいかない。これを出さないと、獣医師免許を剥奪される旨の脅迫めいたことが書いてあるからね。せっかく苦労して取った免許、いつかは獣医師になってよかったと思える日が来るんじゃないかと、今でも夢を抱いている。愚かで憐れな、と笑ってくださるな。

 でも、このニュース、大学だけはウハウハ大笑いだろうなあ。これまで獣医系大学の統合が計画されていたのに、その計画がなくなって逆に学生が増えるのですから。リストラの危機から一気に…ですがな。そう、喜ぶのはこれを考えている一部の偉い人たちだけ。これから獣医師になろうとしている高校生などは騙されないように。獣医師が今足りないって言っても、免許を持ちながら獣医師の仕事をしていない人間をかき集めれば、席だけは埋まってしまうわけですよ。獣医師免許を持ってる人間が足りないわけじゃあないと私は思う。
 獣医師でなくても、それまでの仕事を辞めるっていうのは本当に勇気がいる。次にいい仕事が見つかる保障なんてないし、家族を支える大黒柱であれば子供まで巻き込んでしまう危険があって、本当に悩む。獣医師免許を持っている人間は、簡単に次の仕事が見つかるなどと思っている人がいるならば、それは全く見当違いだ。獣医師免許を必要とする再就職先は本当に少ない。獣医師であることに拘っていることができない。私自身も再就職のための別の資格をとるため、準備している。なりふり構わず、どんなものでも仕事に就かなくちゃいけないことだってある。そんなリスクを背負ってまで、安定した収入源である自治体を辞める獣医師がどうして多いのか、そこを分析して改善していかない限り、不幸な若者を増やすだけだ。
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by fussyvet | 2007-03-20 10:54 | 動物

人間嫌い

 小学校に入っていないほど小さい頃、私は母よりも父の方が好きだった。父のあぐらに腰掛けていた覚えもあるし、父のひざの上に乗せられて車のハンドルを握らせてもらったり、買い物に行った時、母には「ダメ!」と拒絶された欲しい物を父が「買ってやれば?」と言ってくれたり、と制約が多い母よりも父が好きだった記憶がある。
 それが小一の夏に突然変わってしまった。父の暴力が始まったのである。私が小一のある夏の日、父は庭で花火を始めた。私が喜ぶと思ったのかも知れないし、ただ単に自分がやりたかったのかそれは分からない。その日、父が始めた花火は、手で持つタイプの花火だけではなく、打ち上げ花火もあった。それを見て、母が言った。
「お父さん、危ない!止めて!」
母を真似て、私も言った。
「お父さん、危ないよ!」
そして、父はキレタ。母を殴り、私に対してもベルトを持ち出して脅した。私はどうして父がそんなことをするのか理解もできず、ひたすらショックで怖かった。母が私を連れ出して車に乗せ、さまよいドライブをした。私は呆然と助手席の窓から外を眺め、涙を母に見せないようにするのがせいいっぱいだった。
「???」
自分の身に起こっていることをどう理解してよいのかわからない。
人間嫌いの始まりだった。
「親すら信用できないのに、どうして他人が信用できるのか?」
 今思えば、当時の父を取り巻く環境から弁護することもできるが、当時7歳の私にそんな考えは及ぶはずもない。

 動物は違った。彼らは無邪気で、彼らとだけは信頼関係ができた。そして、何よりも彼らは”弱い”私よりも弱い。守ってやらなくてはいけない。こうして、私は獣医師になることを志した。

 動物愛護に関心を寄せる人の中には、私のように人間嫌いの人も多い。

 しかし、残念ながら、動物の問題は、まず人間を愛することができる人でないと解決することは不可能だと断言せねばならない。それは、人間社会が、「初めに人間ありき。」であり、動物の問題が人間の経済生活と深く関わっているからであり、動物の虐待問題に関してすら人間社会の問題と不覚関わっているからであり、”糾弾されるべき人”だけを糾弾したところで、何ら改善しないからである。

 1歳になったばかりの息子は、かわいい動物を見る度に、なんともかわいらしい声を上げて喜ぶ。私は息子に私が辿った経過と同じ道を歩ませたくはない。他人を好きになって欲しい。今から積極的に外に連れ出している。彼が獣医になりたいと思うかどうかは知らないし、何に関心を持つようになるかわからないが、獣医師であれなんであれ、もしも動物の問題に関心を寄せるとすれば、彼には”人間嫌い”から入って欲しくない。
 動物の問題は人間好きにしか解決できないのだから。
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by fussyvet | 2007-01-14 02:12 | 動物

企業で動物実験に携わる人からのメールより

 臨床検査学部を卒業し、今年度製薬会社に入社された方からメールをいただいた。実験動物の飼育と解剖が業務の一つだとおっしゃる。入社するまで動物実験についてご存じなく、実際に仕事として携わった時は辛くて涙が止まらなかったという。
 動物実験に携わっているのは企業などの場合、このように獣医師以外の人が携わることの方が多い。獣医は学生時代に解剖の経験がある。初めて仕事として行う解剖のショックは、獣医以外の人と比較すればましだろうと思う。けれど、獣医以外の人の多くは、それまでに解剖の経験はない。ましてや動物実験の場合、なおさらだろうと思う。
 こういう人に対して、上司や先輩などは「仕方がないこと。」「そのうち慣れるよ。」と慰めの言葉とも何とも言えない言葉をかける。「そんなに嫌なら辞めたら?」というものも多いだろう。「辞めたら?」って?馬鹿を言ってはいけない。このご時勢、そうそう簡単に再就職先があるか?何よりも、その人が辞めても誰かがやる。そういう仕事としての枠ができてしまっているのに、「辞めたら?」の一言で済ませられるほど簡単なことならば、誰も涙を流すほど悩んだりしないものだ。それでは、動物実験が全くへっちゃらな人や、寧ろ動物実験が好きな者がその仕事に就いたらいいのだろうか?違うだろう。そんな人が就いたら、動物の苦痛など全く考慮されず、苦しみはますます大きくなる。その点から考えれば、動物実験は、この手紙をくれた人が抱いた辛さを少しでも感じられる人がやってくれないと困るのだ。
 今日も誰かが実験を行っている。辛い辛いと言いながらやっている。その人たちも自分がその仕事に就くまでは、何も知らず、何も考えず生きてきた。皆そうだ。自分がその立場になって初めて考える。けれど、少しでも改善をしたいのならば、その立場になってから考えていたのでは遅いのだ。多くの人に事実を知ってもらい、どうしたらいいのか考えて欲しい。そうしていかないと、そういう仕事も、そういう仕事に使われている動物たちの境遇も何も改善されないのだ。こういうメールをもらうたびに、「とっとと口をつぐんで、何も考えずに生きていこう。」という考えを打ち消している。何も考えず生きていけたらこんなに楽なことはない。けれど、まだそれはできない。こういう仕事があることを広く知ってもらい、ではどうしていったらいいのか、多くの人が考えて日々の生活の中で行動してくれるようになるまでは。

 手紙の主が最後に言った。
「まずは「知ること」が重要だと思い,現在は動物実験における正しい知識を得ようと努力しています。そして将来は、動物実験代替法の研究や普及に携わりたいと思うようになりました。」
とても嬉しい言葉である。

※動物権利活動の過激派の中傷や嫌がらせはこういう人にも及びます。人を傷付け、人権を損なうだけで動物が何か益を被るわけでもない。非常に愚かな行為だと思います。
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by fussyvet | 2006-11-22 10:25 | 動物

かつての夢とだぶって、まぶしくて、愚かな・・・

「何でも治すスーパー獣医」
 テレビの特集でやっていた。かって自分自身が目指した姿とだぶる。
「あの時、お金があれば。何の迷いもなく、院に残っていれば。」
思っても仕方がないifを思う。道を見失った私はとにかく就職しなければ、と故郷の公務員になった。”まさか”の仕事であった。保健所勤務になろうとは全く想像していなかった。イヌ・ネコの引取りをすることになるとは…。大学で一所懸命に身に着けてきたことは、一切が水の泡になった。
「こんな仕事!」
無責任に、平気な顔で、当然のようにイヌ・ネコを持ってくる人間たちに体よく使われて人生を終わるのか。何のために獣医になったんだろう?何のために勉強してきたんだろう?譲渡される動物はほんの一握り。馬鹿馬鹿しく、無力だった。

 子供の頃、テレビ画面の中の獣医師のように、私は「どんな病気でも治す世界一の獣医師」になることが夢だった。

 それがどうした。今の私にはかわいい息子ができ、愛に溢れた生活を送っているではないか?治すために多くの治療費を費やされる動物もいれば、ただで殺される動物がいるではないか?私はそれらの動物のために、自分が経験したことを語り、力になっていく、そういう獣医として生きる、それが務めじゃないか?実験に使われる動物たちの苦痛と数を少しでも減らしてやる、そういう獣医にならんとしているのではないか?

 幸せな動物たちのための成功した獣医師の姿は、時に単純に私の目をくらます。相変わらず、愚か者の私である。
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by fussyvet | 2006-06-30 22:47 | 動物

離乳食を考えている時に思ったこと

 昨年(2005年)12月に神奈川県伊勢原市で行われた日本動物実験代替法学会第19会大会の親睦会で、ゲスト演者として来日していたNICEATMのディレクターである獣医師にこれを機会にとばかりに近付き、名刺ももらっていろいろ話をさせてもらっていた時、その獣医師が
「娘がベジタリアンになっちゃって。」
と笑いながら嘆いていた。ローティーンにして娘がベジタリアンになってしまったことは、彼にとって嘆けることだったらしい。娘さんがどうしてベジタリアンになったのかちょこっと聞いてみたけれど、父親である本人もよく分からないらしい。お父さんの姿を見てベジタリアンになったのか、外からのいろいろな情報でベジタリアンになったのか。獣医師という職業は、基本的に動物を利用する立場にある。そういう仕事に就いているお父さんにとって、娘がベジタリアンという生き方を選択したことは、自分の仕事を否定されているようで少し悲しかったのかも知れない。

 なんてなことを昨日で3ヶ月になった息子の離乳食について、いろいろ勉強し、検索している間に思い出した。厳格なベジタリアンの中には自分の子供もベジタリアンにしようとする者もいるかも知れない。だが、私はそれは親のエゴだと思っている。乳幼児期に菜食で育った子供について、その子が本当に健康上問題なく成長できるというデータはない。息子には普通の離乳食を与えようと思っている。卵、お魚、そしてやがてはお肉も。何を食べていきていくか、どうやって生きていくか、どんなライフスタイルにするかはこれからの息子の人生の中で息子が決めればいいと思う。私がとやかく言うことではない。娘がベジタリアンになってしまったNICEATMの獣医父さんの逆で、息子が肉食獣になってしまった獣医母さんに将来私はなるのかも知れないが、それもまた良しである。

 とりあえずの離乳食、良識派の6名の委員が先頃辞任してしまったプリオン調査会も業界団体も信用できないので、牛肉だけは息子に与えないでおこうと思うけどね。
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by fussyvet | 2006-04-05 15:33 | 動物

農家と家畜保健衛生所との関係

(ある養鶏場)の獣医師2人逮捕 茨城の鳥インフル問題 [ 02月27日 13時46分 ] 共同通信

 鳥インフルエンザ問題で、茨城県警は27日、鶏の抗体陽性反応を県に届け出なかったなどとして、家畜伝染病予防法違反(届け出義務違反、検査妨害)の容疑で、養鶏会社○○○(横浜市)の獣医師2人を逮捕した。さらに数人を取り調べており、容疑が固まり次第、同日中に逮捕する方針。
 県警の調べや茨城県によると、○○○の獣医師は昨年8月下旬、運営する茨城県内の3養鶏場の検査で、別の養鶏場の鶏から採った検体を3養鶏場の検体と偽って提出し、県の検査を妨害した疑いがある。県の調査では、同社の別の2養鶏場でも検査妨害があったことが判明している。
 ○○○の獣医師は昨年、知人の独立行政法人「動物衛生研究所(動衛研、同県つくば市)職員の獣医師に非公式に鳥インフルエンザの検査を依頼し、抗体陽性反応が出たが県に届け出なかった疑いも持たれている。


 このニュースでは県が全く感知していなくて、寧ろ「検査妨害」などと容疑者を一方的に悪者にしているけれど、真実はどうかなと疑ってしまう。それから、動物衛生検査所についても何も触れられていないけれど、鳥インフルエンザの検査を実際にしたのはこの動物衛生検査所で、結果を見たのも同じ。一般の人が見たら、「どうして検査した方が届け出ないの?」と疑問に思うのが普通じゃないかと思う。この辺り、とても曖昧。
 だいたい、畜産農家と管轄の家畜保健衛生所との関係は、持ちつ持たれつでとても濃密。更に獣医師同士は、同県の獣医師会で顔見知りになるから・・・。
 家畜保健衛生所は誰のためにあるのか分からないような機関。本来なら畜産の振興と病気の蔓延予防のため、国民全体のためにあることが建前。でも、その実は農家のためオンリーであって、農家もそれを当然だと思っている。以前、私が勤務していた時、ある養鶏場から定期的にある最近の検査のために持ち込まれる検体を検査していた。めったにその最近は検出されないのだけれど、ある時、持ち込まれた検体全てから検出されたため、依頼主であるその養鶏場に結果を伝えた。すると、驚くようなことが起こった。その養鶏場に鶏を卸している別の養鶏場が電話で怒鳴り込んできたのだ。
「そんな結果、どうして出したのだ!?もっと、考えろ!」
というものだった。「この人、何を言ってるのだろう?私にもみ消せとか、内緒にして結果を出すなとか言ってるのか?」と呆れてしまった。周囲に相談してみたが、依頼された検体の結果を出さずにはいられないことは共通の意見で当然のことである。が、その怒鳴り込み養鶏場にしてみれば、守ってくれるはずの家畜保健衛生所(因みにその怒鳴り込み養鶏場は管轄外)が守ってくれなかったというところだったわけだ。
 私はね、仕事を全うしたかったの。あなただけの僕じゃなくて、公僕だったんです(過去形)。そんな当たり前のこと、通じないのが、農林水産分野であり、利権に群がる輩が蔓延ってしまう大きな理由です。もちろん、真摯にこつこつやっている農家、獣医師も大勢要るのですが。昔と違って、今や、もたれあい、もみ消し、隠蔽などすれば、このニュースのように逮捕されてしまうのだということを我々獣医師は肝に銘じておかなければならない。
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by fussyvet | 2006-02-27 16:30 | 動物