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中の人と外の人

獣医師になりたかったけれど、動物実験が嫌で文系の学部に進んで就職したが、将来の目的が持てず、やはり動物と関わる仕事がしたくて、畜産関係の仕事を手伝っている方からメールをいただきました。動物実験が嫌という青臭い考えから夢を捨てたことを後悔している、外からあれこれ言ってもただの変な人で、中から強い意思で変えていかないといけない、自分には動物に関する知識がない…とここまでで文字化けして後は読めませんでした。

読める範囲を読んで私の思ったことだけを書きます。

「大学には入ったものの…」「大学は出たものの…」将来の目的が持てない状態は、誰しも経験することだと思います。動物実験を承知で「やらずに後悔するよりは、やってから後悔する方がいい」と獣医師になった私には、この将来の目的が持てない状態は就職後に訪れました。中にいても、経験の浅い下っ端が何か言ったところで、「変な人」であることには変わりありません。中にいる者の場合、外の人と違い、その仕事で生活が支えられています。何かあれば、生活そのものが危うくなります。その現実を考えると、強い意思さえあれば、中にいる人は現実を変えられるということは、相当困難なことです。以前、獣医師なんだから、動物のためにできることはいろいろあるだろうとか、ホリスティックな獣医さんになってほしいとか、動物愛護活動家の方から言われたことがありますが、それはその方々自身の理想を私に求められているのであって、獣医師だからと言ってできることではありませんでしたし、私が求めるものでもありませんでした。

中の人と外の人が一点において違うことは、内情をよく知っているか否かだろうと思います。しかし、内情を知るが故にできないこともあり、結局どんなメリットがあるかと言えば、外の人が思うほど、内部で改革を進めていくことはできません。それは会社員など、何らかの組織に属したことのある人なら、誰しも頷くことだろうと思います。

現在、私は外の人です。ただし、知識を持った外の人です。今は動物に直接接触する仕事はしていません。別の仕事ですが、とても幸せです。これまでの経験(動物に関することでなくても)も活かされています。元「中の人」として、こんなところから情報発信をしています。今現在、中にいるわけではないので、情報発信の頻度も減ってきています。そのうち、ネットを全て止めてしまおうと思っています。それでも、今の仕事と子育てに一所懸命なので、不満はありません。

中の人と外の人、獣医師と獣医師でない人、それぞれ状況は違いますが、それぞれの状況に合せた、自分が納得できる道を見つけていくしかないのじゃないかと思います。動物に関する問題ではなく、人生の問題だろうと思います。中にいるからこそできないこともあれば、外にいるからこそできることもある。結局は、個人が納得できる人生を探求していく事柄なんだろうと思います。

稀ではありますが、高校生から「僕はどうしたらいいのでしょう」というメールをもらうことがあります。身近にいて獣医になりたいけれど…という人に対してはアドバイスできますが、会ったこともない人からの漠然とした質問のみでは、その人自身の成績、志望動機、経緯、さらには住んでいる地域がわからなければ、アドバイスはできません。人生は千差万別です。結局は、自分で考えて、納得できる道を歩むしかないのだろうと思います。

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by fussyvet | 2014-01-13 11:17 | 動物

活動に利用されたくなくて

 東日本大震災後のあらゆるジャンルの動物愛護運動家による非常識な「狂騒」に嫌気がさし、しばらくブログを触る気にもならなかったけれど、またゆっくり、つらつらと書いていくことにしました。動物愛護運動、特にアニマルライツ運動に利用されることはご免こうむりたいし、その対極の側にある人たちの現状にも全く賛成しかねる。それでもいずれも意見にも一理あることは当然あるわけで、そんな中で自分の経験から思うことをまた書き出していきたい。

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by fussyvet | 2012-08-12 21:48 | 動物

「20 km圏内」のドタバタ

動物を守りたい人にもいろいろある。愛玩動物を守りたい人、野生動物を守りたい人、畜産動物を守りたい人、そして実験動物を守りたい人。福島第一原発の半径20 km圏内に取り残された動物たち(この場合、愛玩動物および畜産動物)を助けようと、それまで実験動物のアニマルライツに傾倒していた人たちまでも一斉にネット上に集まって、行政に多くの声を電話を呼びかけ、現場の状況も考えず、結果的にその機能をマヒさせるような行為にまで及んでいた。そんなさ中、一人、前線で活動している獣医師がいて、動物愛護な人たちは皆その獣医師に注目し、称賛し、期待をかけていた。

ところが、あるテレビインタビューでその獣医師が、取り残された畜産動物の命をなんとか救おうと、一時的に「実験動物」としてそれらを移送することを提唱した。その途端、その「実験動物」という言葉に反応したアニマルライツな彼女たち、それまでは、他の動物愛護な人たちに便乗してその前線獣医師を応援していたにもかかわらず、ピタッと立ち止まり、「う~ん」とうなっている様子。自分たちがその存在を否定していた動物実験・実験動物が肯定されるような形になり、それはちょっとと立ち止まった。

後先考えず便乗するような行動は何にしても良い結果を生まないわけで…。

前線獣医師は、彼女たちの反応を「過敏だ」とし、説明を加えているが、いずれにしろ、彼が提唱していることが実現すれば(私自身は実効性に乏しいと思っているが)、「実験動物」が増えることには変わりない。その削減を目指している人たちにとって、それを認めてしまっては、自分たちの主張の一貫性が失われてしまう。最初から、アニマルライツな人たちがその思想からできることは、「この悲劇を教訓にして、皆、ベジタリアンになりましょう」「動物の飼育を止めましょう」と呼びかけることだけだったろうと思う。だって、人間が動物を飼育している限り、悲劇はなくならないのだから。

加えてこの一件によく表されていることには、獣医師は、獣医師である限り、決してアニマルライツな側には属しえないこともあるだろうと思う。

私は動物を取り巻く悲劇をなくしたい。でも、こんな一貫性のない人が多い中にあって、それは不可能なんじゃないんだろうか。猫も杓子も集まって、お祭り騒ぎ。ぐったり疲れた1ヵ月、早く収まってほしい。

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by fussyvet | 2011-05-27 09:57 | 動物

食事とは、もともと食べられないものを食べられる状態にして口に入れることなので

ユッケによる食中毒の死者が4人になったというニュースが入りました。食肉処理の段階での過失なら、一チェーン店だけに収まらず、拡大していくはず。原因食品、原因施設等については、現在調査中ですので、個人としては、これ以上、犠牲者の数字が上がらないことを祈るだけなのですが、ちょっと「食事」ということに関して思うことがあるので、基本的な知識を基に書きとめることにしました。

食中毒予防の三原則は「つけない、増やさない、殺菌」。「つけない」は食中毒原因物質を食材、加工中食品、そして最終食品につけないということ。家庭でも、まな板を魚、肉、野菜で使い分けたりするし、未加工の食材と加工済みの食品とを直接的・間接的に接触させないようにするのは、これにあたります。次に「増やさない」というのは、食中毒原因物質を増殖させないということ。食材、加工中食品、最終食品は常温で長く放置せず、冷蔵庫・冷凍庫で保管するのは、これにあたります。「長く」というのはあいまいなので書いてしまうと、常温で細菌が1回分裂する平均時間は30分、魚介類にもともと付着している腸炎ビブリオにいたっては10分に1回分裂するから、特に食材はすぐに冷蔵庫へ入れた方がいい。

最後に「殺菌」。これは、主に加熱を意味します。調理の最終過程で大抵の食事は加熱が入るけど、これは、もともと固い食材を柔らかくして食べやすくするという意味だけじゃなくて、「殺菌」の意味もあるわけです。ユッケだけじゃなく、刺身など非加熱食品の場合、この加熱がなされないから、食中毒のリスクは大きい。そのリスクを減らすために、「つけない」「増やさない」の二原則が守られなければいけません。「殺菌」のために、生魚は真水に弱い腸炎ビブリオを減らすために水道水で洗ったり、肉であれば、枝肉の段階で塩素水を使って噴射・浸漬させたりしていると思いますが、「加熱」ほどの効果はありません。

食中毒原因細菌によって、感染が成立して発症する細菌数が違います。多くの原因菌は、十万単位、百万単位の個数が口に入らないと、発症はしません。が、中には少ない細菌数で食中毒を起こす菌種があります。サルモネラやカンピロバクターは1万個程度で発症しますし、病原性大腸菌にいたっては、100個程度で症状が出ます。生食用食肉の基準が厳しくて、実際には生食用牛肉なるものは存在しないと言われていますが、食肉処理の段階で病原性大腸菌数を安全なレベルで維持するためには、厳しくせざるを得ないことから現行の基準になったはずです。ネットニュースなどでは、「現行の形骸化した基準を緩和しろ」という関係業者の声が載っていましたが、上の理由から、これはありえないと思います。

「なぜ、その基準を守らせてこなかったのか」という行政への批判があります。施設への通常の立ち入り検査(食中毒事件調査以外ということ)は、各自治体の保健所の食品衛生監視員が一名ずつで行います。そこで、生食用食肉として販売されているものを見つけた場合、口頭指導をするでしょう。が、罰則がないため、そこまでです。中には、「罰金でもあるの?」と言ってきたり、「他の店もやってることだ。なんでうちだけ!」と食って掛かる業者もいます。「人気のある食文化を止めさせることは難しい」という話がニュースに出ていたのは、そういう背景もあるのだと推察します。行政が実際に強制力を発揮できるのは、食中毒事件が起こってしまってからの「営業停止・禁止」「回収命令」措置ぐらいです。

以上は、私が食品衛生監視員であった頃に得た基本的な知識を基にした話です。実際の基準はもっと細分化されていますし、私が仕事をしていた頃から変わったこともありますから、現在の情報は厚労省のホームページで検索してみてください。

今、一消費者として考えることを最後に。そもそも、食中毒はいつでも起こっています。ニュースになるのは、飲食店等を原因施設とする「食中毒事件」だけです。だから、食中毒とはお店で起こるものと思っている人も多いと思いますが、実際には家庭での食事を原因とした食中毒も多い。「食事」とは、本来そのままでは口にできないものを口にできる状態にしてから食べるということです。その意味で「食事」には、外食、内食に関係なく、常にリスクが付きまとう。今、清潔になった日本ではそのような意識は忘れ去られていますが、この事件を一契機として、個人で食事のリスクから家族を守る方法を最確認してみませんか。これから気候が暖かくなってきます。今、室内には朝食時に食べたものが、網やスノコをかけるだけでそのまま放置されていませんか?肉や魚を購入後、どこかへ寄り道などして、常温に長く置くことになっていませんか?外食時、その食事は子供に与えてもいいものですか?

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by fussyvet | 2011-05-05 12:30 | こうして社会は回ってる

獣医学教育における生体実習について質問をもらいました

動物愛護に関心を持つ方から質問をいただきました。

Q. 欧米で一切動物を犠牲にせずに単位をとり、獣医になれる大学が増えているのですが、それに対して、「模型やCGだけで学んだ獣医師には診てもらいたくない」「実際の生物を用いた実験でしか学べないことがある」という意見をよく聞きます。そこでこれに関するご意見や生体を用いた実験だからこそ学べたことがもしあるのであれば、おうかがいしたいと思います。

まず最初に、欧米で一切動物を犠牲にせず単位が取れる獣医系大学が出てきているというものの、最近はあまり聞きません。やはり限界があるようです。そのことから考えても、「実際の生物を用いた実験でしか学べないことがある」ということは真実だと思います。ただ、「模型やCGだけで学んだ獣医師」についてですが、そんな人は実際にほぼ皆無だと思います。「一切動物を犠牲にしない」ということは、「一切動物の体を用いて学ばない」という意味ではありません。欧米では、献体制度と言って、動物病院で亡くなった動物の遺体を所有者から承諾を得て実習に用いる方法を取り入れているところがあります。実際に、そういった方法で学び、獣医になった北欧の獣医師と話したことがありますが、彼女は卒後、小動物のための病院を開業しています。生体を犠牲にしていなくても、動物の身体からは学べることがあるし、実際にそうしているし、また、最低限、そうでなくてはならないということです。

では、献体制度からも学べない、最初に触れた生体を用いた実験でしか学べないことを何に置き換えていくのかについてですが、これが難しく、教育機関としての大学全体が本腰をあげて取り組まない限り、教育における代替法の導入は実現されないでしょう。一時期、学生が熱心に取り組んでいましたが、彼らが社会人になって大学を離れたら、後を熱心に継ぐ者もなく、大学側が本腰を入れる前に衰退していったように感じています。結局、一時の流行で終わってしまいました。学生の代替法を求める声が大きくなり、さらにそれに指導者側も参加しなければ、生体実習代替法の開発はできません。今、北海道大学獣医学部でそのような取り組みがされていますが、獣医学会で時々発表がある程度で、現在、どのような進行状況であるのか、その他の日本動物実験代替法学会など、外には大きく聞こえてきません。

以上は、大学教育、特に獣医学教育に関することであり、高校以下の学校については生体実習など必要ないと思います。実際に私が育った県では、中学一年でミミズを犠牲にした以外、小中高で解剖はありません。それでも、私は全く問題なく成人し、高等教育を受け、獣医師の資格を取って現在に至っています。


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by fussyvet | 2011-02-12 11:37 | 動物

獣医にひたすらなりたい、高校二年生の女の子からメールをもらいました

先日、また獣医師に憧れる高校生からメールをもらいました。結果的に、今回は以前とは反対のパターンとなりました。

***受け取ったメール***
こんにちは、Aといいます。
私は、高校2年生の女子です。
獣医になりたくて、今勉強しています。

でも親や先生から反対されています。
学力もそうですし、獣医の仕事としてもです。
今の学力では届かない。
私に獣医の仕事が勤まるのか。
いろいろ言われています。

獣医が「動物のお医者さん」ではないことも、動物を死なせてしまうときがあることも、分かっているつもりです。
「獣医師に憧れている若いあなたへ」も読みました。
それでも、獣医になりたいと思います。
正直、賛成してくれている身近な大人はいません。

私のまわりには、残念ながら獣医がいません。
だから私の知識もインターネットやテレビ等と、限られてしまいます。
獣医になることを諦めるつもりは全くありませんが、獣医についていろいろ知りたいと思います。
そこで、暇なときでいいので、質問に答えていただけたら嬉しいです。

高校生のときの学力はどれくらいでしたか。
また、どれくらい勉強していましたか。
獣医になるまでで嬉しかったこと・辛かったことは何ですか。
獣医になってから嬉しかったこと・辛かったことは何ですか。
獣医の仕事の喜び・苦しみは何ですか。
私のような人が獣医を目指すことについて、どう思いますか。

本当に暇なときでいいですし、答えたくなければ返信はかまいません。
ただ、獣医についてのいいことも悪いことも知っておきたかったのです。

今日は、突然メールしてすみませんでした。
また、このサイトを参考・励みにして勉強を頑張っていきたいと思います。
読んでいただき、ありがとうございました。

Local Time: 2009/11/20/23:17
***受け取ったメール内容はここまで***



このメールに対して、私は以下のように返信しました。

A 様

初めまして。「動物のお医者さんが見てきたこと」のサイト管理人fussyvetです。

周囲の人の反対や学力の問題など、獣医になるには否定的な要素が多く、また、「獣医師に憧れている若いあなたへ」を読まれたにも関わらず、獣医になりたい理由はなんでしょうか?また、どのような獣医をイメージして、そこまで強く獣医になりたいと思われているのでしょうか?

(私の学力について)
私は中学までは、近畿、東海、関東という地域の区切りの中で総合○位であり、基本的学力が高かった方です。高校に入り、自分の能力を高く見積もりすぎて、勉強を熱心にしなかった時期があり落ちましたが、それでも偏差値は○から○あったと記憶しています。

(どれくらい勉強していたかについて)
高校二年生のときは、部活が忙しくて、熱心に勉強せず、宿題すらサボる始末でした。が、今、思えば、高校二年までは少なくとも宿題だけはきっちり理解できるまで集中してこなすべきだったと思います。そのための勉強時間は人によって違うと思います。時間よりもまずは集中力です。因みに高校三年の秋、苦手な日本史だけを集中して頭に叩き込むために費やした時間は、学校から帰宅してすぐ始めて、決めたノルマが終わるまで、つまり、朝の5時,6時まで勉強するときもありました。

> 獣医になるまでで嬉しかったこと・辛かったことは何ですか。
> 獣医になってから嬉しかったこと・辛かったことは何ですか。

嬉しかったことは、外科の研修生時代に動物が治って飼い主さんが喜ばれたことです。獣医の勉強自体は、とても興味深く、大学時代は充実していました。辛かったことは、動物実験、手術中に亡くなってしまったこと、自分が世話をしていたイヌ・ネコが実験に使われてしまったとき、社会人になって保健所での引き取り業務、食品衛生監視員でヤクザのような人が行政に来て対応しなくてはならず恐怖を感じたことです。

> 獣医の仕事の喜び・苦しみは何ですか。

どんな獣医になりたいのかによります。まず、それを教えてください。

> 私のような人が獣医を目指すことについて、どう思いますか。

正直、このメールで感じられるのは、獣医に対する情熱と強い思い込みのように思いますので、もう少し冷静になって、自分の得意科目から他の道も模索されてみることをお勧めします。

獣医といっても、いろいろです。どんな分野の獣医になりたいのか、また、既にターゲットにしている大学はあるのか、それらが分れば、もう少し具体的に書けるだろうと思います。

大変だと思いますが、高校の勉強は大切です。その時は辛いだけでも、大人になるとそれが分ります。どうか、ひたすら集中して、要領よく的を絞って頑張ってください。

fussyvet
***私の返信内容ここまで***


再び同じ女の子からメールが返ってきました。

お答えいただき、ありがとうございます。

最初は虐待されている動物を助けたいって思いました。
たぶん、それが一番最初です。
動物が好きなのもありますが、テレビで虐待されている動物見て、助けたいと思いました。
それからいろいろ獣医のことを調べて、いろいろなことを知りました。
動物を殺さなければいけないときがあること、動物のためじゃなくて人間のための医者であること。
理想的なことばかりではない、現実的で、目を背けたくなることがあることを知りました。
それでも、獣医を目指すことをやめようとは一度も思いませんでした。
理解しているつもりでも、理解してないのかもしれません。
理想をいつまでも追い求めて、現実を見ていないのかもしれません。
心の何処かで、動物を助けられるって、信じてるのかもしれません。
意地になっているのかもしれません。
いろんな人に反対されて。
それで意地になっているのかもしれません。
何でなりたいの、って聞かれて、はっきり答えることができません。
動物を助けたいという気持ちに変わりはありませんが、助けられないと言われたら、返す言葉がないです。

根本的には、やっぱり動物を助けたいって気持ちがあります。
獣医になって動物を殺すかもしれないけど、助ける命もあるはず。
獣医にならなければ、殺さなくてすむかもしれないけど、助けることもできない。
たとえ殺す数のほうが多くても、獣医になって動物を助けたい。
それが、私の気持ちです。
幼稚で、浅はかな考えかもしれません。
でも、獣医を諦めるという考えは、浮かんでこないのです。

今は、○○大学を考えています。
合格できるのか全く分かりませんが、勉強を頑張りたいと思います。

返信していただき、ありがとうございました。


ここでやりとりは終えました。

一子供の諦めきれない夢を砕く理由などありません。ただし、「獣医にならなければ、殺さなくて済むかもしれないけど、助けることもできない。」というのは間違いです。虐待されている動物を助けたいのであれば、なおさらです。現実に虐待されている動物を助けているのは、職業としてではなく、ボランティアとして保護活動を行なっている獣医以外の人が多いのですから。それに獣医でなくても、殺さなければならない場面もあります(安楽死の依頼等)。何度も繰り返しますが、獣医だけが動物を助ける者ではないのです。
まだ、高校二年生です。この先は、各分岐点で彼女自身が選択していくことです。現時点で「なんとしても獣医師になる。」と決断しているのですから、私が言えることは「勉強頑張ってください。」だけです。

受験勉強は大変だと思いますが、頑張って乗り切ってください。


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by fussyvet | 2009-11-27 15:36 | 動物

第22回日本動物実験代替法学会学術大会に行ってきた

 第22回日本動物実験代替法学会について、長い文章を書いたのに、Internet Explorerの不具合のお陰で、消えてしまった。あの長い文章をもう一度書く気力もないので、まとめだけ。

・開催地が大阪であったせいか、市民シンポジウムの一般参加者が少なかった。
・動物愛護団体の参加も少なかった。
・獣医系大学の学生もいなかった。
・獣医師の参加もほとんどなかった。
・昨年、ある動物愛護団体を怒らせたと聞いたので、今年はどうかと様子を見ていたが、大した対立もなく終わった。
・学会発表としては、3Rのうち、Replacementに集約されつつある。
・そのReplacementの道のりもまだ長く、悲観的。
・化粧品におけるReplacementすら危ういのに、医学系研究における動物実験はなくならないだろう。
・獣医師としてできることは、RefinementとReductionであることを確信。
・教育における代替法は、学生による打ち上げ花火的活動では持続性がなく、教官の意思による参加が不可欠。
・研究者と動物愛護団体が参加する唯一の学会で、双方の確執は非建設的。
・動物実験の全廃は無理でも、無駄な実験を減らすことはできる。そのためには、巨大研究機関だけでなく、公には知られていない研究機関を含める(意識を変えるための)法制化が不可欠(そこに、研究者側と動物愛護団体との話し合いの意義がある)。

 まあ、こんなところ。
 Internet Explorerに怒っています。


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by fussyvet | 2009-11-16 11:12 | 動物

炭酸ガスによる殺処分について(再掲あり)

 以下のような質問を受けました。

 所謂、炭酸ガスによる殺処分の実態についてですが、例えば、「気絶をするから 安楽死だ。」と言う人も居れば、「もがき苦しむから安楽死ではなく、窒息死である。」と言う人も居て、私にはそういった専門的知識もありませんので想像の範囲でしか知ることが出来ません。
 私は一辺倒な考え方を持つ事にとても抵抗があるので、質問したくメール差し上げました。
 炭酸ガスでの殺処分は動物にとって安楽死と言えるのでしょうか?


 これに関して、昨年の実験動物医学会で発表された教育シンポジウムの抄録が公開されていますので、そちらを参考にしてください。なお、この抄録の最後の演題に出てくる効果が高いとされるイソフルラン麻酔の併用ですが、ほとんどの自治体ではイソフルランなどは使われていません。設備、予算の問題等があると思います。それから、二酸化炭素による安楽死についての過去記事は「二酸化炭素による動物の殺処分について(2007年9月3日付)」にあります。
 「気絶をするから、安楽死だ。」「もがき苦しむから安楽死ではない。」は、あくまでも見た目から判断されたものであり、科学的裏付けはありません。もちろん、見た者(殺処分を実施する者)の精神的苦痛も考慮に入れて安楽死を定義する人もいます(実施する者の精神的苦痛が生じる方法は、安楽死と認められず、回避するべき)。動物の苦痛除去を第一に、実施する者の精神的苦痛や実用性(効率、コスト、設備等)をその次に考えて安楽死方法は考えられるべきだろうと思います。今のところ、二酸化炭素はその鎮痛作用によりガイドライン上、安楽死方法として認められている国が多いと思います。が、分かっていないことが多いのも事実で、その解明には今後の研究が必要です(そうすると、この部分についての動物実験を肯定することになります)。一番いいのは、イヌ・ネコの飼育者に審査を設け、商用・個人的趣味を問わず繁殖を制限等して殺処分される動物をなくすこと、実験動物の削減であることは言うまでもありませんが。


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by fussyvet | 2009-09-27 15:50 | 動物

食用に回していれば、話は別

 昨日の記事の中で、食用に供する目的でなければ「と畜場法」に該当しないと記したけれど、どうも嫌な想像が頭から離れない。

 獣医系大学の病理学または解剖実習では、起立しているウシの前肢の後ろと後肢の前にロープを回して、前後からそのロープを学生が引っ張ってウシを仰臥させる。その際、廃用になったとは言え、元気はウシは当然大暴れするわけで、セラクタール(R)など麻酔薬や鎮静薬が予め投与されるのだけど、酪農学園大学ではその前投与が行われていなかったのはなぜだろうと疑問に思う。まさか、解体して異常が見当たらなかったウシの肉を食肉販売業者なり、農家なり、飲食店なりに転売したり、大学の学祭で焼き肉にして売っていたりしないだろうな。万が一、そんなことが行われていたのであれば、明らかに「と畜場法」「食品衛生法」違反だけれど、いくらなんでもまさか、ね。
 食肉検査員としてと畜場に出向いていた頃、農場で立てなくなったウシをその場でと殺、解体して、検査して欲しいという業者がいたが、私の当時の上司が「と畜場法」の根本を覆す行為だとして拒否した。すると、逆切れした業者が脅し文句で食ってかかり、傍らにいた私たちも本当に恐ろしい思いをした。それでも上司は屈せず、法律を守り、獣医師として私たちの職責を全うしたわけだ。強迫にも屈せず、立場を貫く獣医師もいるわけで、あくまでももしもだが、大学が実習後の解体肉を食用に転売されることを承知で回していたとしたら、これは大問題になるはずだ。BSEの検査もしていないだろうし。
 今回の刑事告発は「動物愛護法」違反だから、「と畜場法」違反についてまで調べられるのか分からないけれど、個人的にはとても興味がある。

 毎年、一人は獣医学生が動物実験を苦に自殺したという話を聞く。国全体で自殺者の数が増えている日本だから、比としたら大したことがないと言われてしまえばそれまでだ。が、自殺の理由として、生活苦であるとか時代を背景にした要因ではなく、一貫して動物の犠牲を苦にして学生を自殺に追いやっている学会が、その事実を無視続けて改善を試みないのであれば、どんな体質の学会なのかと世間は思うだろう。このままであれば、自殺者もなくならないし、内部告発もまた起こるだろう。そして、動物愛護運動も先鋭化するだろうし、賛同者も増えるだろう。一つ一つの事件で「ああ、よかった。」じゃなくて、もういい加減にその一つ一つを学会全体で考えるきっかけにすることが建設的ではないだろうか。
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by fussyvet | 2009-08-25 09:55 | 動物

酪農学園大学が刑事告発された件

 JAVA「動物実験の廃止を求める会」が酪農学園大学の学長を相手取り、通称動物愛護法違反容疑で札幌地検に刑事告発したそうです。以下、同サイトから引用

引用ココから*****
 酪農学園大学獣医学科では、牛の病理解剖や剖検、解剖実習、殺処分において、鎮静剤(キシラジン)もしくは筋弛緩剤(サクシニルコリン)の接種のみしか行っていない状態、つまり、牛を意識や感覚が明瞭である状態で、学生達が力づくで牛を横倒しにして、押さえつけ、首を切り開き、頚動脈を引っ張り出して切断し、放血(血をすべて流れ出させる)させて殺しています。牛は大変な苦痛と恐怖を味わいながら死んでいくのです。

 その他、筋弛緩剤(サクシニルコリン)と獣医用薬品ではない科学実験用の試薬である硫酸マグネシウムを注射し、全身、特に呼吸筋と神経系機能を侵し、窒息死させたり、牛舎や牛の体を消毒するための逆性石鹸「パコマ」を静脈内に投与し、酸素欠乏に陥らせて殺処分する、といった方法も用いられるケースがあるのです。

 虐殺の実態は、酪農学園大学の獣医学生など関係者からの内部告発で明らかになりました。その実態は以下のとおり、非常に凄惨です。
***************************

 筋弛緩剤を頸静脈に打ち、牛が倒れたら「足結び係」が足を結び「放血係」が首を刀で裂き、頚動脈を引き剥がし、鉗子で動脈を挟み、ハサミで切れ込みを入れ、バケツにつながるチューブを動脈内に挿し込み、鉗子をはずし放血をする。
 眼瞼反射や肛門反射で死を確認し、足のロープにフックを掛け、吊り上げて体重を量る。解剖室中央に牛を移動させ(天井からフックのついた牛を左右に移動できる機械がある。有線のリモコンで操作。)頭をはずし、また牛を移動させ、台に降ろし、四肢をまずはずし、そのあと「腹出し係」がお腹を刀で裂き、腸、胃、肝臓などを取り出す。
 そして「胸出し係」が胸くうを空け、肺と心臓を取り出す。一方では「脳出し係」が脳を出している。
子牛の場合は、ドンと押せば倒れるので、その要領で倒し、足を結び、いきなり刀で首を裂く。時折、子牛を連れてくる研究室の学生がキシラジンを打っていたが、牛の意識ははっきりしていた。子牛の場合はチューブを動脈内に挿しはせず、ズバっと切って血が流れるままにする。動脈は体の深部にあるので、深く切る。殺される牛の中にはそれほど弱っていない牛もいた。その際、牛がモーモー!!!!!!とひどく苦しそうに、大きな叫び声をあげることがあったが、放血を担当していた当時の病理学教室の大学院生がそれに対し、「モーモー!!!!!だってよ、アハハハハ!!」と笑ったこともあり、その光景はまさに地獄絵図のようだった。
まだ鳴いている子牛に先生が近づき、刀で気管を切り裂いたこともあった。

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 その女子学生は、この残酷な殺処分方法に対して、勇気を振り絞り、「せめて麻酔を打って欲しい」と学長に直訴しました。しかし、彼女の訴えを学長は黙殺し、この残酷な方法を続けました。女子学生は、日々、行われる牛の虐殺のことで悩み続け、昨年10月末、首をつり自殺をしたのです。彼女の死後も大学は何ら改善を行っていません。

 動物愛護法の第40条第1項において、「動物を殺さなければならない場合には、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によってしなければならない」と定められており、同法に基づく「動物の処分方法に関する指針」の第3 処分動物の処分方法においては、「処分方法は、できる限り処分動物に苦痛のない方法を用いて意識喪失の状態にし・・・」とある。そして、「苦痛」の定義として、肉体的な痛みだけでなく、精神的苦悩、恐怖、不安等も含まれると定められています。
動物愛護法第44条第1項において、みだりに愛護動物を殺すことが禁じられているにも拘らず、酪農学園大学では、被告発人によって、年間約500頭にものぼる数の牛が虐殺の犠牲となっているのです。

 現在、JAVAでは、刑事告発とは別に、酪農学園大に対して、即時改善を要請していますが、全国には16の獣医大学があり、酪農学園大以外でも、同様の方法をとっている大学があると思われます。
 この酪農学園大学への活動は、獣医学教育における動物実験を廃止させるための第一歩となる重要な活動と考えています。

引用ココまで*****

 少し前に酪農学園大学の学生がウシの解剖実習に悩んで自殺したという噂は聞いたのですが、詳細はここから出ていたんですね。因みに私が学生の頃の同じ実習では、学生40人に対し殺した牛は数頭でした。年間500頭というのは学生数に比しても多いかな。まあ、酪農家から廃用となった乳牛の譲渡を受けやすい条件下にあるのだと思います。それから、私の学生の頃は、最初に牛に対してセラクタールという薬剤を筋注してから倒したこと、頸動脈からの放血時に皮下に局所麻酔薬を投与していたこと等がここに記載された酪農学園大学の方法と相違する点です。「パコマ」を静注する方法は、投与された動物は見た目には静かに死んでいくため、酪農家、養豚農家で病気で動けなくなった家畜にはよく用いられる方法です。”簡単”で”安価”でしかも消毒薬ですから、感染症が疑われる場合、消毒効果もあって一石三鳥くらいの感覚です。パコマは麻酔薬ではないのですが。
 まあ、モーモー鳴きながら死んでいく牛を嘲笑った大学院生がいるという時点で、大学の品格が問われます。そういえば、私のいた大学の医学部では、献体された遺体解剖実習で、切断された耳を壁に当てて、「壁に耳あり。」と冗談を言った医学生が退学になったという噂があり、当時、「さすが医学部だな。獣医学部ではどうして退学にならないんだろう?」と思ったものです。私の同級生は、カエルの足を使って冗談を言っていましたから。ウシの解剖実習では、ずっと飼育実習で使ってきたシズカという名前の乳牛を最初に使いました。私が大学の実習で泣いたのは、それが最初で最後です。泣くことは恥ずかしいことだと思っていたから、隅の方にいってましたが、気付いた同級生の一人が「泣くな。」とやさしく声をかけてくれました。その同級生は今、母校で教授をしています。
 夕べ、ちょうど学生に戻った夢を見ていて早朝に目が覚め、今見つけた記事です。タイムリーにいろいろ思い出させてくれますな。
 上記の様子を読んで、”地獄絵図”だと思った人は、獣医系大学に行かない方がよいかも知れません。上記の方法で主に問われるべき点は麻酔薬使用の有無だろうと思います。残りの部分はどこも同じやり方でしょう。確立された方法ですから。ことの成行きを興味深く見守りたいと思います。

 ちなみに、ウシを殺してもよいのは「と畜場法」で「と畜場」だけと決まっているのではないかと疑問を抱かれている人を見かけましたが、同法で定められている「と畜場」とは「食用に供する目的で獣畜をとさつし、又は解体するために設置された施設」(第3条第2項)ですから、食用に供する目的以外、つまり実験・実習でとさつする場合は同法に含まれないはずです。
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by fussyvet | 2009-08-24 04:55 | 動物