二酸化炭素による動物の殺処分について

 近頃はダルフール紛争を気にかけるあまり動物たちのことはうっちゃっておいたので、罪滅ぼしのために一つ記事を書いておく。
 二酸化炭素(俗に炭酸ガスと呼ばれるが)による殺処分について、特に愛玩用小動物を処分する保健所等の行政機関で行われているものについては、自身の経験から”安楽死ではない”と言ってきた。実際に手を下す同僚の話では、10分15分と炭酸ガスを注入しても息が絶えていない個体がいるという。意識を失って倒れこんだと思われるまでにも決して短いとは言えない時間がかかり、見ているものは皆「これは安楽死ではない。」と思う。しかし、獣医学的にはこの二酸化炭素という物質は特定の動物種について安楽死薬として容認されたものであり、イヌについても二酸化炭素による安楽死が容認・推奨されている。二酸化炭素には麻酔作用および鎮痛作用があるとされている。
 この話をすれば、皆一様に驚く。先日東京で行われた動物実験代替法学会でも二酸化炭素の鎮痛効果についての発表があった。私はこの発表(ラットについての実験結果)を行った演者に尋ねた。
「実際にイヌについても同じことが言えると思われますか?」
「大丈夫だと思います。実際にイヌに使ったことがありますが、1分くらいで倒れます。」
「私は保健所を経験してきましたが、保健所の殺処分では、かなり長く苦しむようにみえます。これはやはり器材の不適当さによるものでしょうか?」
「そうだと思います。」

 現段階での結論としては、二酸化炭素は鎮痛作用や麻酔作用があり、安楽死薬としては容認されている。が、麻酔薬など他の薬剤の方が短時間で意識を消失できることも事実であり、これは一度に多くの個体を殺処分する場合に限られるべきものだと思われる。さらに、二酸化炭素が適切な濃度に達していない段階で殺処分される個体が暴露されれば、意識消失までの時間は延長され苦悶は長引く。現在、自治体で使われている炭酸ガス注入用器械は古いものが多く、確実な濃度の達成と維持ができるとは到底言いがたいものが多い。各自治体で行われている殺処分を「動物の愛護および管理に関する法律」に準拠したものとするには、殺処分頭数が殺処分実施職員数にとって十分少なくて可能であるならば適切な麻酔薬の過量急速静脈内投与による安楽死により、また、処分数が多く二酸化炭素による安楽死によるならば二酸化炭素が確実に適正濃度に達して維持できる装置を導入するべきであり、漏れなどによる濃度の達成と維持が困難である装置は順次更新されなければいけない。その要望を出すのは、各自治体の住人であるし、意見が多ければ器材導入のための予算をつけやすいと推察する。なお、このことは譲渡による殺処分される動物数の削減や避妊去勢手術の励行による動物人口過剰状態の緩和、動物取扱業に関する規制強化を否定するものではない。

 以上、現在の獣医学的見地から個人的な結論です。

参考:
アメリカの獣医学会による安楽死のガイドライン(2007年)
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by fussyvet | 2007-09-03 12:58 | 動物
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