貧困と紛争と実験動物

 広大なアフリカ大陸の西方にシエラレオネという小さな国がある。レオナルド・ディカプリオ主演の映画「ブラッド・ダイヤモンド」の舞台になった国であり、世界でもっとも平均寿命が短い国である。1991年から2002年の12年間にわたり続いた内戦では無抵抗の市民が老若男女問わず虐殺され、10歳にも満たぬ少女が母親の目の前で強姦されて、その後その少女の目の前で母親は惨殺され、10歳にも満たぬ少年が銃を持たされて自身の手で親兄弟を殺すことを強要され、生後2ヶ月の赤ん坊さえ押えつけられて斧で何度も切りつけて手足を切断され、現在その地を訪れれば手足を失った子供・大人をあちこちで見かける貧しい国だ。
 そのシエラレオネという国で、絶滅の危機にあるチンパンジーの捕獲および屠殺が禁止になった。現在、動物愛護運動が活発化・一般化した日本を含める先進諸国では、チンパンジーに限らず実験用サル類の捕獲・繁殖が世論的に困難になり、その代わりに中国、東南アジア諸国、そしてアフリカなどが動物実験を行う先進諸国への供給源となってきている。貧困の克服のために外貨が欲しい発展途上国と、国内の世論を気にせずしかも自国で調達するよりもコストをかけずにすむ先進国との利害関係が釣り合った結果である。そして、発展途上国のサルは捕獲され、繁殖され、先進国へ輸出され、実験に用いられるのだ。サル類の動物実験を廃止させるため、サル類を供給している発展途上国が動物愛護団体から攻撃されることもあるが、貧困、そして貧困をもたらす紛争の解決なしでは根本的な問題解決にならないだろうと思う。
 法的にチンパンジーの捕獲と屠殺が禁止になったことは喜ばしいことかも知れないが、私は懸念している。密猟が進むことを。そして、それらの陰に紛争が存在することを。動物の問題に関しては、先進国の動物愛護運動からの圧力による発展途上国の表面的な動物保護の推進を喜べない。まずは貧困問題の解決をしないことには、発展途上国の人たちの生活が先進国の人間によりいつでもどちらにでも転がされていることになるからだ。先述のシエラレオネの内戦には先進国で高価に売買されるダイヤモンドをめぐる悲劇だった。まずは人間の欲と、一見関係がないと思われる人間の無知から生じる人間自身の悲劇をなくさない限り、動物たちの悲劇も決して終焉を見ない。そんな思いもあって、近頃、世界で起きている紛争に焦点を絞って調べているのであった。
 因みに「動物の権利は人間の権利と同等だ。」「人間の権利を守るために動物愛護運動など止めるべきだ。」という両極端な意見は一切の問題の解決につながらない無益な議論である。
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by fussyvet | 2007-08-06 15:28 | 動物
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