子育ての狂気

 そう、私はまさに狂気の中にある。産後うつだとかさんざん言ってきたが、どうもそんな医学的診断名で片付けられないもののようだ。

 なぜか、遠い記憶の中にあるNHKのあるドラマのことを思い出して仕方がなかった。タイトルはわからない。富田靖子主演で、彼女がコンピューターゲーム上の赤ん坊を育て、その過程で自分自身の娘が3歳のときに死なせてしまっていることがエピソードとして盛り込まれ、最後はそのサイバーな赤ん坊を助けようとする際に思うあまりに出ないはずのおっぱいまで分泌する…と、こんな話だったのだが、ネットで検索したら「ネットワークベイビー」だった。”狂気”という言葉は、その検索途中で目にした言葉だ。こんなにしっくりくる言葉はない。
 乳幼児を育てる母親は皆正気ではないと思った方がいいだろうと思う。私自身がまだ1歳児までしか経験したことがないので乳幼児としたが、もしかしたら、子供が成人するまで、あるいはもしかしたら子供を持ってしまったら一生女は狂気の中に放っておかれるのかも知れない。勿論、とても精神がしっかりした人なら、もしかしたら、「自分は今少しおかしいな。」と感じることがない人もいるかも知れない。けれど、私は感じない人はいないだろうと断言したくなるほどに、自分のおかしさを肯定したい。
 息子がかわいい。本当にかわいい。愛している。今失ったら、私は生きていけない。しかし、それでもイライラする。言っても聞かぬ、癇癪を起こしたら止まらない、危ないところに行こうとする…全て思い通りにいかない。自分のしたいことは一切できない。こんなに愛しているのに、こんなに大切なのに、どうして言うことを聞かない、どうして危ないことをする?男女の愛憎はとっくの昔に飽きたが、そんな陳腐なものとはまた別の固い愛憎が私と息子との関係には生じている。このままいったら、子供を自分の物扱いする、自分がさんざん軽蔑してきた馬鹿親になりかねない。
 それでも息子はかわいい。いろいろなことから守ってやりたい。悪いニュースを耳にするたびに「息子に同じことが起こったらどうしよう。」と不安になる。息子が小さいからそう思うだけかも知れない。だとしたら、いつになったらこの重い不安定さから抜け出すことができるのだろう。

 もう製造も店頭販売も中止になっている「ネットワークベイビー」のVHSを購入した。私はきっと見入ってしまうだろう。最初に見たのははるか昔、独身の頃。それでも強烈な印象を私に残し、子供が生まれた今また記憶の底から浮かび上がってきたのだ。絶対に私は見入る。自分を重ねるはずだ。
 この母親の狂気というものから早く抜け出したい。しんどい。身がもたない。脱出を試みたが、ことごとく失敗した。もう、開き直ってこの狂気にどっぷり浸かるしかない。飽きるほど浸かって子育てが落ち着いたとき、きっと私は今の不安定な自分を振り返って懐かしく言うのだ。
「母親していたな。」

 安定してたまるか。不安定な私も私だ、文句あるか。
[PR]
by fussyvet | 2007-07-06 14:30 | 家族
<< リード 共有しなくてはわからないなど… >>