ミンチ

 きっこのブログ: マジメな人がバカを見る美しい国を読んでいたら思い出したことがあったので記事にすることにしました。上のリンク先で最初に紹介されているメールにとんでもない肉の話が載っています。そのメールの主は最後に「それから私は肉が食べられなくなりました。特にミンチを使った物は何が入っているのか解らないので全く口にできなくなりました。」と言っていますが、その通りです。
 私は地方公務員の獣医職として働いている時、食肉検査員として何箇所か屠畜場を回りましたが、そのうちの一箇所は健康な牛だけではなく、病畜の屠畜解体も請け負っていました。ここでいう病畜とは起立できない牛です。起立できない理由にも産後起立不能から、神経系の病気によるもの、筋断裂、悪性腫瘍などさまざまありました。病畜の肉と言っても、ちゃんと屠畜検査してから出荷されていましたから、それ自体は何ら違法な行為ではありません。が、これらの病畜牛には、何度も繁殖を繰り返したためガリガリにやせ細ったホルスタインの経産牛がほとんどで、そのような肉はブロック肉にするには質が悪く、ミンチにするしかありませんでした。ホルスタインのやせ細った老牛のことを”ミンチ”と呼ぶほどでした。これも蛋白源を無駄にしないという意味から肯定されていたことですし、何ら悪いことではありません。
 問題は残留抗菌性物質です。起立不能になるような牛には、農家、あるいは大動物臨床獣医師が抗生物質等を投与します。通常は、休薬期間というものがあり、特定の抗生物質等を投与された家畜は特定の期間、牛乳の出荷や肉としての出荷ができなくなります。それを守らず、肉用として出荷してしまう農家がいたわけです。農家にとっては、牛が死んでしまうようりも、死ぬ前に肉として出荷すれば損失もなく、寧ろ利益になりますので、休薬期間を守って出荷するには何の問題もありません。しかし、そこの屠畜場については後日、ある大動物臨床獣医師がぽろっと漏らしました。
「あそこなら1万円も握らせれば、何だってやってくれる。」
実際に金銭のやりとりがあったのかどうかは知りませんが、私が勤務していたそこの屠畜場はなめられていたのです。当時、私は残留抗菌性物質の検査も担当し、検出されれば当該製品を回収しなくてはなりませんでした。食肉業者に対する通知から、関係機関への連絡など、そのための労力は決して楽なものではありませんでした。ですから、私はこの大動物臨床獣医師が言った言葉に心底激怒しました。
「おのれは、こっちがどんだけ苦労していたか知らずに…。アホ言え!」
 実際に非公式に病畜のある内臓と筋肉の残留抗生物質の検査をしていた頃から少なからず、残留抗生物質がコンスタントに検出されていました。そして、それらの肉はミンチ肉として販売されていたのです。

 この残留抗生物質の話はたまたまミンチ肉になりやすい病畜牛にまつわる話で、見た目で残留抗生物質が見える云々の話ではありませんが、ミンチほど誤魔化しやすい製品はありません。それはミートホープの事件からも既にお分かりかと思います。そして、先日、やっと業界に頭が上がらない農林水産省が今回の事件をきっかけにミンチ肉を調査すると言いました。今回の事件が皮肉にも良いきっかけになったのだろうと思います。

 先のリンク先の最後に2002年3月25日付の「農民」に同年1月から3月までの「食品の産地偽装、不正表示一覧」が紹介されていました。それによると17件中12件が食肉関係でした。そう言えば、私が知っている全農系の鶏肉加工業者も当時でいう製造日時を偽っていました。大手スーパーと取り引きがあるところですが、我々検査員よりも大手スーパーの方が怖いらしく、スーパーの査察がある時は熱心に掃除していました。製造日時も大手スーパーの査察時は偽装を偽装していたかも知れませんね。私の病畜牛についての体験は、とんでもないのは農家と獣医師でしたが、ミートーホープの社長が、「消費者や業界の体質も悪い。」と言っていました。「業界が悪い。」という部分には大賛成です。

 私は肉を食べないようにしていますが、もし挽き肉を使う頻度が高く、今回の事件で気になる方は、信用のできるお肉屋さんの店頭でブロック肉を選び、それを目前で挽き肉に加工してもらうのがいいと思います。この方法により、残留抗生物質や産地偽装などは避けられなくても、少なくとも豚肉が混じることはないはずです。

 最後に、私はあの業界は大嫌いですが、あの業界の中でも雇用されている人の中には個人的に信頼できる人はいますし、その人たちまで十把一絡げにしたくはありません。私が信頼している人たちのためにも、あの業界のとんでもない人間たち(偽装だけでなく利権屋も)が白日の下に曝され、一掃されることを願って止みません。
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by fussyvet | 2007-06-27 13:00 | こうして社会は回ってる
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