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卵のポスター

 家畜保健衛生所に勤務していたとき、所内廊下の掲示板にたまごのポスターが貼ってあった。それは卵が完全栄養食品で、もっとも安価で安定した食材だというPRポスターだった。完全栄養食品という言葉には当時も「ビタミンCには乏しいよな。」と心の中で突っ込みを入れていたが、その前を通るたびにどんどん違和感は大きくなり、あるときハタと気が付いた。
「こうやって国民は洗脳され、食生活を固定され、そこに農林水産業界の利権が働いている。」

 もちろん、真摯にやっている人たちが大多数だろう。おばちゃんが一人で地鶏を飼育し、ハーブを与えてその卵を売り、年取った廃用鶏は
「かわいそうだけれど、自分の手でつぶすよ。」
という小規模経営農家。JAの指示により、抗生物質もホルモンも合成抗菌剤もワクチンも一切使わず、
「死ぬ鶏を見殺しにせねばならない。簡単な抗生物質で治るのに。割りに合わない馬鹿な商売をやっとります。」
と悔しそうに語っていた無薬農法の養鶏農家。
 が、対極には助成金や補助金をあてにし、もらえなければ食って掛かってくる農家もあった。何のための農政なのか、私はこの人たちの利権に利用されるために仕事をしているのか、なんのために獣医になったのかと考え続けた。
 戦後、食料困難の中、国民の栄養改善のため畜産が貢献した力は大きい。だけど、現代はそんな基本的で純粋な動機からはるかに遠ざかってしまっている。かつて、私は1日卵1個と牛乳200mlは飲まねばならぬものだと思い込んでいた。私が義務教育で食べていた給食もそうだったから。しかし、あのポスターを見て以来、そんな思い込みから目が覚めた。
 国民の食生活すら、洗脳を受けている事実。政治、経済って新興宗教と似ているところがある。
by fussyvet | 2007-04-06 20:54 | 動物
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