獣医学部の定員増へ・30年ぶり08年度にも
政府は全国の大学にある「獣医学部」の定員を約30年ぶりに増やす方向で検討に入った。鳥インフルエンザやBSE(牛海綿状脳症)など家畜の安全性に関心が高まっている現状を踏まえ、獣医師の増加につなげる狙い。与党とも調整し、早ければ2008年度の入学から定員を増やす。 獣医学部や畜産学部など獣医学を学ぶ課程を持つ大学は現在、国立大学法人が10校、公立大学法人が1校、私立大学が5校。合計定員は 930人だ。文部科学省は「獣医師の数は足りている」との判断や教育水準の維持などを理由に1970年代から大学数、定員数とも増やしていない。 (16:10) 日経2007/3/19 ニュースより このインターネット上のニュースには書かれていないけれど、地方自治体の獣医師が足りないからというのが大きな理由らしい。国内でのBSE発生以来、それまではリストラの対象でもあった獣医職は急に増えることになり一気に売り手市場になってしまった。しかし、辞める獣医が多く、自治体の獣医師はいつも足らないのだ。だから、獣医学部の定員を増やすことになったらしいが、感想を言わしてもらうならば、獣医学部の定員を増やすことが自治体の獣医師の増加にはつながらないと思う。自治体の獣医師不足は、「獣医になったのに、こんな仕事…?」辞めてしまう獣医が多いことが大きな理由の一つだと思うからだ。獣医学部の定員を増やし、世に出す獣医師を多くしたところで、私のように獣医師免許を持ちながら、獣医師の仕事をしていない者が増えるだけではないかと思う。実際、私がいた自治体の同期では獣医師は7人だったが、私を入れて既に6人辞めている。残っている一人も連絡を取り合っていないので分からないが、もしかしたら辞めているかも知れない。今でも若い獣医師も辞める率が高いが、いろいろ見ているとどうやら私がいた自治体だけの傾向ではないようだ。 どうして辞めるのか?6年間夢を抱きつつ一所懸命勉強しても、地方自治体に入った獣医師の業務は、およそ獣医師として学んできたこととは程遠い内容だからだ。保健所でのイヌ・ネコの殺処分、屠畜場で肉屋に怒鳴られながらの食肉検査(仲の良い職場もあるけれど)、農政での畜産農家の顔色を伺いながらの助成金行政(まじめな農家もありますが)。BSEの検査などは、獣医の大学実習で行う手技を使うけれど、これとてテクニック自体は獣医師でなくてもできることだ。地方自治体の獣医職に就いた獣医師は、厳しい大学受験を経て合格し6年間夢に満ち溢れて忙しく学んでも、それまでのことは報われないと感じ、希望を失って辞めていくものが多いのだ。そんな状況で獣医師になる数だけ増やしても、ペーパー獣医師が増えるだけだろうと思う。 農林水産省は2年に一度、獣医師免許を持ったものの就業状況調査みたいなものをしているから、獣医師免許を持ったものが現在どういう状況にあるのか、実態を把握しているはずだ。そういう分析はされていないのだろうか?もっとも、獣医師免許を持ちながら、獣医師としての道を歩んでいない者は、国が追跡調査をしようとしても、その足取りがつかめないだろうけれど。私も思い出して、4年ぶりに実態調査を出したもの。獣医師会に入っていないから、その時期も分からず、用紙ももらえないからね。私はたまたま近い知り合いの獣医師が書いていたから調査の時期だということを知って、自分で様式をダウンロードして書いて送ったのだから、2年後にまた近くに獣医師がいなければ思い出さないだろうし、だからと言ってずっと放っておくわけにもいかない。これを出さないと、獣医師免許を剥奪される旨の脅迫めいたことが書いてあるからね。せっかく苦労して取った免許、いつかは獣医師になってよかったと思える日が来るんじゃないかと、今でも夢を抱いている。愚かで憐れな、と笑ってくださるな。 でも、このニュース、大学だけはウハウハ大笑いだろうなあ。これまで獣医系大学の統合が計画されていたのに、その計画がなくなって逆に学生が増えるのですから。リストラの危機から一気に…ですがな。そう、喜ぶのはこれを考えている一部の偉い人たちだけ。これから獣医師になろうとしている高校生などは騙されないように。獣医師が今足りないって言っても、免許を持ちながら獣医師の仕事をしていない人間をかき集めれば、席だけは埋まってしまうわけですよ。獣医師免許を持ってる人間が足りないわけじゃあないと私は思う。 獣医師でなくても、それまでの仕事を辞めるっていうのは本当に勇気がいる。次にいい仕事が見つかる保障なんてないし、家族を支える大黒柱であれば子供まで巻き込んでしまう危険があって、本当に悩む。獣医師免許を持っている人間は、簡単に次の仕事が見つかるなどと思っている人がいるならば、それは全く見当違いだ。獣医師免許を必要とする再就職先は本当に少ない。獣医師であることに拘っていることができない。私自身も再就職のための別の資格をとるため、準備している。なりふり構わず、どんなものでも仕事に就かなくちゃいけないことだってある。そんなリスクを背負ってまで、安定した収入源である自治体を辞める獣医師がどうして多いのか、そこを分析して改善していかない限り、不幸な若者を増やすだけだ。
by fussyvet
| 2007-03-20 10:54
| 動物
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