理想の母ネコ

 実験用のネコのコロニーがあって、計画的に繁殖させていくのだけれど、出産後本当に丁寧に優しく、文字通り猫なで声を出しながら子供を育てていく母ネコいれば、生んだ直後に食殺してしまうものもいた。途中まで普通に育てていたのに、1ヶ月くらい経ってから子供の手足を噛み切ってしまうものも。それは母ネコの性質によるものが大きい。限られた空間に閉じ込められていても母性の強い個体はきちんと育て上げ(それでも子猫が大きくなってきて手狭になってくるとイライラして咬む真似をするものもいるけれど)、母性のない個体は食殺してしまうのだ。それでものびのびとした空間にいれば、母性のない個体でも食殺などしないかも知れないけれど、推測であって定かではない。
 子育てしながら、そんなネコたちのことを何度も思い出す。私はどんな母ネコだろう?とりあえず、生んだ瞬間に食殺してしまうネコではなかった。じゃあ、どんな困難な状況でも上手に愛情いっぱいに子猫たちを育てていたあの母ネコみたいかしら・・・?そうありたいという自分自身の母親としての自画像だけは大きい。そう、自画像だけは。

 今日、何度も何度も甘え泣きを繰り返し、手を放させてくれない息子に思わず、
「うるさいっ!」
って思い、実際に食器を洗いながら口にしてしまった。これまでもイライラすることはあっても、言っても分からぬ赤ん坊に言ってはいけないと思い、言わなかったのに、今日は言わなければ治まらなくて吐き出してしまった。そう、頭の中では分かっていても、言わないとマグマが胸の内に溜まったようになってしまうと思ってわざと吐き出したのだ。一瞬すっきりした。
 私も食殺する母ネコを何ら変わらない。どこかのホテルの社長の言葉を借りれば、”上等な”母親なんかじゃない。私はあの愛情いっぱいの子育て上手な母ネコみたいではないし、あんな風にはなれないだろう。いや、あの母ネコだって見ていないところではイライラして”カッ”と口を子猫に向かって開いていたのかも知れないじゃないか。
 今日、私は自分の母親としての自画像を捨てた。”理想の姿”なんて自分のものでしかないし、それでよかったんじゃないかと思う。やっぱり私もいつ子供に手を上げるか分からないし、理不尽な言葉で叱るかも知れない。所詮罪深い人間、気をつけていないといつ転ぶか分からないのだ。それをあらためて思い知らされたことは、とても情けなく悲しかったけれど、よかったんだと思う。

 さて、息子と一緒に楽しいお風呂に入ろう。
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by fussyvet | 2006-02-21 19:15 | 家族
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