愛は学習するものである

 息子は生後1ヶ月を過ぎた。この頃、甘えることを覚えたようだ。お腹が空いているわけでも、眠たいわけでも、おしめが濡れているわけでもないのに「あぁ~ん。」とか「おぎゃあ~!」とか泣くのだ。そして、私が抱いてやると泣きやむ。抱いたままあやしていると機嫌が良くなり、そのまましばらくするとやがて眠りに入る。しめしめと思って布団に下ろすとまもなく再び泣き始める。そんなこんなで近頃夕刻からこのくらいの時間まではなかなか自由にさせて貰えない。夕食の支度さえままならぬ。可哀想な夫・・・。
 少し前までとは明らかに違う。0ヶ月の頃は泣く理由は2つしかなかった。お腹が減ったか、おしめが濡れたかである。息子が泣いたら、まずおしめを換えて、授乳してお腹を満たしてやればよかった。お腹一杯になれば、息子は布団ですやすや寝てくれた。それは寧ろ機械的なやりとりだった。息子は本能のままに空腹と排泄の心地悪さを誰にというわけではなく訴えれば、なぜだか分からないけれど空腹は満たされ、おしめも気持ちいいものに換えられる。そして、どうやらそれはどうしてその人なのかは分からないけれど、してくれるのは特定の人で(この場合、”母親”である私なのだけれど)、その人は自分の要求をきいてくれるものらしいということを、息子はつい最近気が付いたのである。そして試しに少し甘えてみた。すると、見事にその人は受け止めてくれた。少しずつ要求の頻度や大きさを増してみた。すると、それにもきちんと比例してその人は応じてくれた。こうして彼はこれまでの経験から、私が彼の要求に応えてくれる人間だということを学習したのである。最初は本能で泣いていただけの赤ん坊が経験から気付き、試し、そして確信して甘えることを覚えた。こうして彼は自分のことを(勿論、今はまだそんなこと意識していないだろうけれど)、愛される存在、大切にされている存在であることを知ったのだ。
 これがもし、まだ息子が本能だけで空腹と排泄の心地悪さを訴えて、それが解消された場合にだけ泣きやむという行動を取っていた、たった10日ほど前の頃に、甘えてみたにも関わらずそれに誰も応えず、ほったらかしにしていたのならどうだろう?きっと、彼は自分が愛されるべき存在であることを自覚できなかっただろう。甘えの要求が拒否されていれば彼は更にヒステリックに泣き叫ぶか、諦めて泣かない・・・感情を無くした子供になるかも知れない。そう愛は学習するものなのだ。生まれつき愛を学べなかった子は愛を知らない。そういったことが本当にあるのだと確信した。
 愛を知らなければ、愛の返し方も分からない。虐待されて育った子供は自分が親になってから子供を虐待し、歴史を繰り返してしまうという。犯罪者は愛を知らない場合が多い。
「どんな育ちであったとしても、自分がしっかりしていればそんな風にはならない。要は本人の問題だ。」
という人がいるが、私はそれは十中八九当たっていないだろうと思う。愛を知らず、人に優しくする方法を知らない子供は情緒不安定のまま、”しっかりする”方法すら知らないからしっかりできないのである。犯罪者を作らないためには、愛を知らない子供を本当の意味で保護しなければいけない。その施策もないまま、私は罪を犯したものの罰を重くする方向にしか社会が進まないことには大反対だ。
 愛も学習により学んで得るものである。赤ん坊の行為である。学校教育のように積極的に学べと求める学習ではない。保護されるべき存在である赤ん坊には愛を学び得られるように大人が積極的に与えるべき学習なのである。乳児院の子供達はどうしているのだろう?以前から私たち夫婦は子供が授からなかったら、福祉施設から養子を迎えて育てようと話していた。生命の種をいじくって新たな命を作り出すことしか考えていない一部風潮がある(勿論、必要性を全面的に否定しているわけではない)。そしてそこへ大量の税金が投入されている。そんなことまでして命を作り出さずとも、生まれてきたのに愛を貰えず、幸福になることを夢見ている子供達が施設には大勢居る。今ある命さえ大切にできない生き物が、どうして新しい命を作り出す技術ばかり追えるものか。(ましてや動物の命など・・・こうして動物もないがしろにされるのだ。)

 愛は学んで得られるものだ。息子が教えてくれた。愛に飢えて生きてきた私が、息子に愛をうまく与えていくことができるだろうか?与え方を間違えはしないだろうか?そんな不安に時々苛まれる。今まで学べなかった愛を私は神からもらいながら息子に返していこう。そして、息子も神の愛に気付くように。存在を否定されたり、ないがしろにされたりする、そんな行為が一つでもこの世から減りますように。愛の虐げはいずれどこかに返ってくる。息子がその犠牲となりませんように。息子が生まれてから、映画などの残酷な場面は一切見られなくなった母であった。
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by fussyvet | 2006-02-07 00:57 | 家族
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