第5回国際動物実験代替法会議 3日目

8月23日(火)
全体講義3
「米国実業界の3Rへの献身」
Marilyn Brown:Charles River Comp., アメリカ
 演者は実験動物生産供給会社の最大手に所属する。アメリカと欧州とを比較しつつ講演。
 動物実験は健康関連分野および環境関連分野で必要であるが、絶え間ない動物福祉への努力が必要。特に動物のための空間の確保は重要。
 アメリカの動物愛護法にあたるAnimal Welfare Actではラットやマウスは対象外である。そのラット・マウスについてはどう取り扱われているのか?AAALAC(自主認定評価制度を通して科学分野における動物の人道的な取り扱いを促進する非営利団体)ではICCVAM(アメリカの動物実験代替法評価機関)および各種団体と協力している。産業界は保証された科学的実験を行う必要があるため、AALACなどによる自主的認定制度を取り入れることも厭わない傾向にある。
 3Rは良いビジネスである。ReplacementおよびReductionによりコスト削減につながるからである。モラル・信頼はそのためにも拡大されていかなければならない。

Parallel Sessions/Workshops
・Educating the Scientist in Animal Alternatives
 主として大学などの研究機関内で、実験動物技術者、研究者に人道的な実験のあり方を教育することの方法論やその効果についてのセッション。実験動物のユーザーである研究者に分かりやすく、かつ受け入れられやすい方法で教育することの意義について。1991年に旧ソビエト連邦から独立したバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)など各国の現状の発表がメイン。日本からはファイザー製薬の方が講演し、一神教であるキリスト教と多神教である神道を比較しつつ、日本でのAnimal Welfareの意識を分析されていたが、私はこの分析に対して個人的に疑問を持っている。祖先は狩猟生活者であり、家畜を人間が支配することを神が許したという考え方のキリスト教国家が多い欧州に比べて、祖先は農耕生活者であり、万物自然の神々からの恵みに感謝しつつ生きているという考え方の日本での動物福祉の取り組みが遅れているのはなぜなのか?現在の状況は宗教観で説明できるものではないと私は思う。
 その他、興味深い講演がいくつもあったのだが、残念ながら私がメモを取っていた抄録集を誰かに取られてしまったので、これ以上解説できないこと、とても悔しいです。

・Non-human Primates- Housing, Enrichment, Positive Reinforcement Training
 サル類の飼育、エンリッチメント、環境の質の向上のためのトレイニングに関するセッション。実験動物であるサル類の福祉の向上を目指して、現場でいかに人間を教育するか、またサルたちを環境に馴化させていくか。

・Forum of National and International Institutions Funding Research according to the 3Rs
 3Rの原則に則った国内外研究機関の研究助成による研究のフォーラム。各国の方向性について。どんな研究に助成金が下りるか。

・Progress And Needs for Developing and Validating Alternatives for Dermal Toxicity Testing
 皮膚毒性試験における代替法に関するセッション。私はこの分野の専門家ではないけれど、人間の皮膚組織と同等のモデルを開発するまでにはまだまだ課題があり、果たして欧州で化粧品における動物実験が禁止される年までに間に合うかどうか…。

・In Vitro Aproaches for Determining Acute Systemic Toxicity
 急性全身毒性のためのIn Vitro試験について。全身毒性をin vitroで測定することは困難である。なぜなら、in vitroは特定の細胞を詰め込んだだけの局所的な試験であり、各種臓器の集合体である全身で発生することを全て予想することは困難であるから。それをどこまで予想できるか、現在の研究状況に関するセッション。

・Computational Toxicology
 齧歯類を用いて行われている安全性試験について、コンピューターや統計で代替しようとする研究のセッション。

・The Contribution of the OMICS Technology to the 3Rs
 OMICSとはゲノム解析に関連した網羅的解析技術のことである。膨大なデータをコンピューターで処理しなければならない。性ホルモンから神経毒性、痛みやストレスの検知まで幅広い分野で行おうという研究。

Lunchtime Forum「苦痛の考慮と評価」
 実験動物の福祉について、それは動物が望むことであるか?痛みだけでなく恐怖や不快感などメンタル面でのケアが必要。動物が逃れられない状況は福祉に悪影響を及ぼす。例えば、3時間の拘束はストレスになる。動物実験は必ずストレスを伴うものではあるが…。

Parallel Sessions/Workshops
・3Rs Databases and Services – Developments Worldwide
各国機関の3Rに関するデータベースについてのセッション。Webで閲覧可能なデータベースについての情報等。

・Progress in Quality Assurance for In Vitro Alternative Studies
保証できるIn vitro代替法の発展状況について。動物実験に置換できる候補は数あれど、それらの信頼性について確実なものは少ない。主として細胞培養法における状況についてのセッション。

・Biologicals: Progress and New Approaches
農学、獣医学、医学など生物化学的分野において、ワクチン開発などは動物実験を外すことができない。規制、意見の統一などはどうなっているのか、3Rへの取り組みなどについてのセッション

・Meeting the Challenge of the 7th Amendment to the EU Cosmetics Directive
欧州のコスメ産業は日本の2倍であり、従事者は35万人いる。1998年に6回目の法改正があり、2009年には代替法が無くても化粧品の原材料における動物実験が禁止される。欧州レベルでは、ECOPA(動物福祉団体、産業界、大学、各国機関による動物実験に関する意見の一致を図っていく新しい欧州組織)やSCAAT(欧州の化粧品会社から成る代替法開発の協力団体)などの団体が先導して法改正に間に合うよう代替法開発努力している段階である。その状況についてのワークショップ。

・Reproductive Toxicology – the EU ReProTect Project
生殖毒性に関するワークショップ。

・non-Invasive Techniques for Monitoring and Imaging (Doerenkamp-Zbinden-Symposium)
MRIなどの非侵襲性(生体を傷付けない)画像により動物の疼痛評価や、薬物動態を解析する方法についてのセッション

Multimedia Exhibition of Alternatives in Education (Erna Graff Session)
 InterNICHE主催による主として大学教育に置ける動物実験代替法グッズの展示。獣医学に関するものでは、気管挿管練習用の犬の模型、静脈注射や経口投与練習用のラットの模型、皮膚縫合練習用のモデルがあったが、ちょっと実物とはだいぶ感触が違い、本番を行うための器官の位置の目安にはなるかも知れないと思ったが、もっと改良が必要だと思った。生理学や薬理学実験のCD-ROMも展示。頑張れ学生。
[PR]
by fussyvet | 2005-09-13 01:04 | 動物
<< あ~びっくりした! 拝啓 >>