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中の人と外の人

獣医師になりたかったけれど、動物実験が嫌で文系の学部に進んで就職したが、将来の目的が持てず、やはり動物と関わる仕事がしたくて、畜産関係の仕事を手伝っている方からメールをいただきました。動物実験が嫌という青臭い考えから夢を捨てたことを後悔している、外からあれこれ言ってもただの変な人で、中から強い意思で変えていかないといけない、自分には動物に関する知識がない…とここまでで文字化けして後は読めませんでした。

読める範囲を読んで私の思ったことだけを書きます。

「大学には入ったものの…」「大学は出たものの…」将来の目的が持てない状態は、誰しも経験することだと思います。動物実験を承知で「やらずに後悔するよりは、やってから後悔する方がいい」と獣医師になった私には、この将来の目的が持てない状態は就職後に訪れました。中にいても、経験の浅い下っ端が何か言ったところで、「変な人」であることには変わりありません。中にいる者の場合、外の人と違い、その仕事で生活が支えられています。何かあれば、生活そのものが危うくなります。その現実を考えると、強い意思さえあれば、中にいる人は現実を変えられるということは、相当困難なことです。以前、獣医師なんだから、動物のためにできることはいろいろあるだろうとか、ホリスティックな獣医さんになってほしいとか、動物愛護活動家の方から言われたことがありますが、それはその方々自身の理想を私に求められているのであって、獣医師だからと言ってできることではありませんでしたし、私が求めるものでもありませんでした。

中の人と外の人が一点において違うことは、内情をよく知っているか否かだろうと思います。しかし、内情を知るが故にできないこともあり、結局どんなメリットがあるかと言えば、外の人が思うほど、内部で改革を進めていくことはできません。それは会社員など、何らかの組織に属したことのある人なら、誰しも頷くことだろうと思います。

現在、私は外の人です。ただし、知識を持った外の人です。今は動物に直接接触する仕事はしていません。別の仕事ですが、とても幸せです。これまでの経験(動物に関することでなくても)も活かされています。元「中の人」として、こんなところから情報発信をしています。今現在、中にいるわけではないので、情報発信の頻度も減ってきています。そのうち、ネットを全て止めてしまおうと思っています。それでも、今の仕事と子育てに一所懸命なので、不満はありません。

中の人と外の人、獣医師と獣医師でない人、それぞれ状況は違いますが、それぞれの状況に合せた、自分が納得できる道を見つけていくしかないのじゃないかと思います。動物に関する問題ではなく、人生の問題だろうと思います。中にいるからこそできないこともあれば、外にいるからこそできることもある。結局は、個人が納得できる人生を探求していく事柄なんだろうと思います。

稀ではありますが、高校生から「僕はどうしたらいいのでしょう」というメールをもらうことがあります。身近にいて獣医になりたいけれど…という人に対してはアドバイスできますが、会ったこともない人からの漠然とした質問のみでは、その人自身の成績、志望動機、経緯、さらには住んでいる地域がわからなければ、アドバイスはできません。人生は千差万別です。結局は、自分で考えて、納得できる道を歩むしかないのだろうと思います。

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by fussyvet | 2014-01-13 11:17 | 動物
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