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「ザ・コーヴ」鑑賞

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日本のイルカ猟を批判したドキュメンタリー映画がアカデミー賞のドキュメンタリー部門で最優秀賞を獲得したという話題から始まり、同映画が国内で上映されることが決定すると上映予定の映画館に街宣車が「反日映画を上映するな」と妨害活動を始めたということで、どんなもんかと思って構えながら見たが、これのどこが反日映画?製作者が外国人というだけで、日本人全体を敵視した内容なんかじゃないじゃない。

全編を通して出てくるのが、「わんぱくフリッパー」の調教師だったリチャード・オバリー氏。彼はフリッパーを演じた複数のイルカの調教師だったが、自分が飼育することで自分の愛するイルカたちがどれほど苦しんでいるかに気づき、イルカの解放運動を始める。もともとは日本での活動などではなく、自国で水族館用に送られるために捕獲されたイルカたちを逃がすため、そこで網を切るなどの非合法的な妨害活動を含めた活動を展開していた人。日本の太地町を標的にするようになったのは、そこが世界中の「イルカショー」への供給源になっていたからだ。

イルカの屠殺現場を撮影するため、彼らはチームを構成する。声をかけられたのは、特撮の専門家、スキンダイバー、冒険家など多種多様なメンバー。太地町に入ってすぐ、見た目で外国人とわかる彼らは警察や漁協から尾行を受ける。町全体が敏感になっていたから、当然と言えば当然。その辺りの攻防と、農水省、IWCにおける日本代表の説明と現実の矛盾、そして、イルカなど海の生態系で上位に立つ動物の水銀汚染を絡めて話が進行していく。映画のクライマックスは撮影に成功した屠殺シーン、そして、その後、その画像を農水省の役人に突き付け、IWCで「屠殺方法は改善され、ほとんどが即死する」と日本代表が説明しているさ中に嘘であると示すように会場に見せて回る。私自身は、イルカを含めた捕鯨反対派が理由とする「知能が高い動物だから」というものには、「知能が低ければよいのか」と反発を感じるが、「屠殺方法が長時間苦しませる方法であるから」という点で私は彼らに賛成だ。ちなみに、牛、豚、鶏の屠殺を見てきたが、イルカ猟よりもずっと苦しむ時間は短い。

リチャード・オバリーは、イルカの調教師だった頃、稼いだお金でポルシェを購入した。それは自分が製作に参加した「わんぱくフリッパー」によってイルカの人気が上がり、経済的価値も上昇し、捕獲されるイルカが増えたせいだったことも知らずに。「私は愚かでいい気になっていた」というようなその自責の念も伝わってくる。太地で撮影した映像を首からかけたモニターに映し出して、IWCのみでなく、東京の街中でたたずむ彼の姿は、道化師そのものだ。それを彼は敢えて自分に課しているようにもみえる。

「反日映画だ」「プロパガンダ映画だ」という声こそ、プロパガンダだろうと思う。多分、裏で関係者が動いているのだろうと思う。そんな声に騙されずに、まあまずは普通の人には見てほしい。そして、考えてほしい。動物愛護に関心のある人もない人も。

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by fussyvet | 2011-07-09 16:34 | 映画
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