獣医学教育における生体実習について質問をもらいました

動物愛護に関心を持つ方から質問をいただきました。

Q. 欧米で一切動物を犠牲にせずに単位をとり、獣医になれる大学が増えているのですが、それに対して、「模型やCGだけで学んだ獣医師には診てもらいたくない」「実際の生物を用いた実験でしか学べないことがある」という意見をよく聞きます。そこでこれに関するご意見や生体を用いた実験だからこそ学べたことがもしあるのであれば、おうかがいしたいと思います。

まず最初に、欧米で一切動物を犠牲にせず単位が取れる獣医系大学が出てきているというものの、最近はあまり聞きません。やはり限界があるようです。そのことから考えても、「実際の生物を用いた実験でしか学べないことがある」ということは真実だと思います。ただ、「模型やCGだけで学んだ獣医師」についてですが、そんな人は実際にほぼ皆無だと思います。「一切動物を犠牲にしない」ということは、「一切動物の体を用いて学ばない」という意味ではありません。欧米では、献体制度と言って、動物病院で亡くなった動物の遺体を所有者から承諾を得て実習に用いる方法を取り入れているところがあります。実際に、そういった方法で学び、獣医になった北欧の獣医師と話したことがありますが、彼女は卒後、小動物のための病院を開業しています。生体を犠牲にしていなくても、動物の身体からは学べることがあるし、実際にそうしているし、また、最低限、そうでなくてはならないということです。

では、献体制度からも学べない、最初に触れた生体を用いた実験でしか学べないことを何に置き換えていくのかについてですが、これが難しく、教育機関としての大学全体が本腰をあげて取り組まない限り、教育における代替法の導入は実現されないでしょう。一時期、学生が熱心に取り組んでいましたが、彼らが社会人になって大学を離れたら、後を熱心に継ぐ者もなく、大学側が本腰を入れる前に衰退していったように感じています。結局、一時の流行で終わってしまいました。学生の代替法を求める声が大きくなり、さらにそれに指導者側も参加しなければ、生体実習代替法の開発はできません。今、北海道大学獣医学部でそのような取り組みがされていますが、獣医学会で時々発表がある程度で、現在、どのような進行状況であるのか、その他の日本動物実験代替法学会など、外には大きく聞こえてきません。

以上は、大学教育、特に獣医学教育に関することであり、高校以下の学校については生体実習など必要ないと思います。実際に私が育った県では、中学一年でミミズを犠牲にした以外、小中高で解剖はありません。それでも、私は全く問題なく成人し、高等教育を受け、獣医師の資格を取って現在に至っています。


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by fussyvet | 2011-02-12 11:37 | 動物
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